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□はじまりの地
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大きな大きな雲が、2人を見下ろしていた。
「雲さん」
カラコが微笑む。
「ちょっとこっちへおいで」
雲が風に揺られて進んでいく。クロもカラコも、おとなしくついていった。
家の裏へまわって、しばらく進み、小さな丘の頂点へたどりついた。そこには1つだけ、石がさびしげに鎮座していた。
どこからどう見ても、お墓だった。
「誰のお墓でしょうか」
「見たのは初めてか?」
クロの問いかけに、カラコはしばらく黙った。
「……少しだけ、見覚えがあるような気もします」
カラコは持っていた花を墓前にそえた。じっと口を結ぶ。
それから雲を見あげた。
「雲さん、このお墓は」
「さてね。キツネには会ったかい? そうか。じゃあ、もう家へお入り」
それだけ言うと、雲はぷかぷか流れていってしまった。
無言でそれを見送り、2人は家へと歩いて行く。
家に人の気配はなかった。
ドアノブを握ったカラコが、クロへ向きなおる。
「クロさん、今までありがとうございました。もしかしたら、弟は帰ってきてないのかもしれません」
「……ああ」
クロにはその言葉の真意がわからなかった。
「何もお礼できるものをもっていない私ですが、よかったら、私の紅茶を飲んでいってくださいね」
ニコリとした顔に、無言でうなずいた。いよいよ旅も終わるのだと、絶望に近い確信を抱いていた。