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□はじまりの地
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森を抜けて、真っ直ぐに進んだ。
草が生い茂り、雲が泳ぐ。そこは限りなく平和に近い土地だった。
「なんだか、懐かしいです」
カラコの表情も、こころなしかのびのびとしている。
「俺は少し、落ちつかないな」
クロとカラコの手は、まだ繋がれたままだった。
「おーい、カイ! 久しぶりだな」
草むらから声がした。カラコがあたりを見回せば、1匹のキツネが飛び出してきた。
「お久しぶりです、キツネさん」
「ああ。弟からの伝言だ。タンスの上から2段目を見て、だとさ」
カラコは首を傾げた。
「なんでしょうか」
「さあな。そこまでは知らね。じゃあな」
そうしてキツネは去って行った。クロとカラコは再び歩きだす。
「カイって誰だ?」
クロがつぶやく。
「私の名前です」
「なんだと?」
ぽかんとするクロを見て、カラコは笑った。
「でも、私、カラコっていう名前も気に入ってるんです」
なんだかバカにされたようで、クロはふくれた。
しばらく行くと家が見えてきた。ぽつんと寂しく建っている。
クロがこの家に押しかけてきてから、ずいぶんと時が経ったように思えた。
ドアの前で、カラコはしばらく躊躇していた。緊張しているらしかった。
ドアノブに手をかけたところで、背後から声がした。
「久しぶりだなあ、カイ」
カラコとクロは振り返った。