二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□いまさらと言わないで
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いつだったか、もう遠い昔。



雨がパラパラと降るなかを、
やっぱり傘なんか持たないお前を
無理矢理一緒に傘に入れながら。


過剰に感激して喜ぶ姿が恥ずかしくて、
誤魔化すように、すごく変な話をしたんだよね。










『いまさらと言わないで』











「・・・努力そういやさ。この傘って。

 よ〜く考えたら、江戸時代とかから
 ほとんど形も何も変わってないんだよな」


「はあ??・・・まあ、そうみたいですね」


傘に入れて下さってありがとうございます!!だの、
やっぱり貴方はうんたらかんたら、とうるさかった
自称ボクの一番弟子。


突然な話題振りについて来れず、目をパチパチとして。

狙い通り、やっと。やっと静かになってくれた。


ああ良かった。


ボクは人知れず、そっと胸をなで下ろした。



学校からの帰り道、ずっとあの調子で
褒めちぎられていたら恥ずかしくってたまらない。

お前はいいから、とにかく静かにしててくれ。
感謝してくれてんのは、顔見りゃボク分かるんだから。


片手でパタパタと赤くなった頬に風を送りながら、
とってつけたように思いついた話題を続ける。



「あれかな、もうこれが完成形!・・・ってことなのかね」


「・・・完成形とは?」


あ。食いついた。


笑いながら努力を見ると、
傘からはみ出た左肩が濡れていた。


眉をしかめて傘を見ると、ボクが持っている
手持ち部分のずっと上の方で、
努力がボクの方に傘の軸を傾けている。


・・・おかげでこっちは濡れてないけど。


こいつバカじゃないの?


「ん〜。

 これ以上改良のしようも、意味もないって言うか。

 1番しっくり来て、
 これで無いとやっぱダメだ!みたいな」


ボクは少し強い口調で言いながら、傘の骨組み部分に
空いてる方の手をかけ、努力の方へと押しつける。


「なるほど・・・。ワニと同じ話ですかね?」


たじろぎ、目で謝ってくる努力に方をすくめて笑う。


「・・・なんでそこでワニが出てくんだよ?!」


2テンポほど遅れて目を丸くしたボクに
今度は努力が吹き出し、笑った。


「目立が言ってたんですけどね」、と前置きをして。



「ワニって動物も、今の姿があの種にとっては最強な姿で。
 どうもあれ以上は進化のしようが無い・・・らしいんです」


「へ〜!さすが目立君。なんでも知っているのね!

 ・・・いや、傘とワニの話とは違うだろ」


「違いますか?」


「片っぽ・・・ワニは強く生きる為に
 試行錯誤した進化の結果、でしょ?
 
 でも傘はさ〜、それじゃ無くても、
 平気っちゃ平気な物だし」


さすがに長く進化してきたワニと、
傘を同列に比べちゃ悪いだろ、と苦笑する。


が、横を見れば顎に手をあて考え込む努力の姿。

またボクの言った言葉尻を捕らえて悩み始めたんじゃ、
と思えば案の定
「完成形、とやらを決めるのは何なんでしょうか?」と
小難しげな事をのたまわった。


「知るか!」とも言いづらい真面目過ぎる顔で
聞いてくるものだから、困るのなんの。



「あ〜・・・どうあがいても、この形が
 やっぱり好きだ、とか。もう、これで良いんだ!!

 ・・・みたいな事思った、とか?

 これが1番でもう良いや、って感じ?」


「なんすか、それ!」


耐えきれず笑いだした努力を、
「うっさい!自分で考えろよ」と肘で突く。


「そうですね・・・ワニは自分で進化の最高形を決め、
 傘はどうしても手放せなかった形がそれだった、
 ・・・って事ですかね?」


「あ〜・・・はいはい。
 真面目に考えんなよ、そんなもん。
 もーそれで良いんじゃない?」



雨が降る中、相手の方へさりげなく傘を
押しつけあいながら帰った、遠いあの日。



そんな記憶に近い夢からふと目が覚めて。



大宇宙神の名を胸に刻んだ私は
「また夢か」、とへにゃり、と笑って頭をかいた。






手の中でシャープペンシルを回しながら、
書類に書かれた日付と、その横に書きおいたメモの内容を見比べる。


自らこんな事をしなくても、おつきマンに聞けばすぐに
詳細なスケジュールを教えてくれる・・・のだが。


自身でも把握しながら進める方がイメージがしやすいと
言う理由から、ここ数十年大宇宙神公務室の机の上には
いつも簡単なメモ帳や、シンプルな筆記具を置いていた。


「やっぱ無理あるな、これ」


書類に書かれた会談の時間と、手元のメモに記しておいた
同日に行われる別件のセレモニーの時間を見比べる。


あまり詰め込みすぎると、反対に
おつきマンに止められる事確実だ。


書き込みに力を込め過ぎたのか、
シャーペンの芯がポキン、と折れた。


未だこんな筆記具を使ってるなんて、と
驚かれもしたが、これが一番しっくり来るのだから仕方ない。


が、未だ生産が消えきらず、地球から取り寄せれるのは・・・。

技術力高く、便利さの中にありながらも、
「紙に鉛筆類で何かを書く」事を完成形、とした者達が
根強くいると言う証拠なのだろう。



懐かしい夢を見たせいか、いちいちあの時の会話と、
そして杉田努力の姿をしていた弟子の姿が脳裏に浮かぶ。

まいったな、と苦笑しながらカチカチとシャーペンを
いじり、書類の山に埋もれる。



どのくらいそうしていただろう。



丁度一区切りついた頃、それを見計らっていたかの様に
公務室のドアが静かにノックされた。


「大宇宙神様。努力マンが急用にて、
 面会を求めに来られております」


ビックリして固まる私におつきマンは微笑んで。

「すぐにお通しします」、と一礼し去って行く。


予知夢だったのか、それとも単に。
やっぱラッキー・・・なのかな?












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