二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□さよならの保留
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勝利兄さんは泣かない人だ。

それが私が物心ついた頃から見てきた、兄の姿だった。




どうしてあんなに強いんだろう?
そう聞いた幼き日の私に、友情兄さんが言った。


そう自分に課して来た人だからな、と。



頷いて、憧れて。

裏切られて、憎み続けて。

真実に出会って、和解して。




長い年月を越えてなお、兄さんは強情で、
負けず嫌いで、強いままだった。



それが、私の兄さんだった。




あるトーナメントのとき、運命はまた動き出した。


裏宇宙への誘い。
新たなる戦いの序曲。


そして、父さんの敵。





ああ、そうか・・・



泣かない兄さんの流した涙に、
泣くわけにはいかなかった、兄の心をみた気がした。




達観してた訳じゃない。




納得していなかったんだね、兄さん。




父さんの亡くなる時も知らないで。

父さんの骨も、拾えなくて。


それは、本当の葬式なんかではなかったから。


からっぽの・・・
ただ、形だけな墓の前で。



父さんとの本当の別れを、兄さんは。


一人、保留にしていたのかもしれない。




兄の涙と、燃えたぎる心に突き動かされるままに
友情兄さんと私はトーナメントを放棄し、飛び出した。


信じがたい事に、追ってきてくれた

会長に世直しマン。

そして私達兄弟の仲間達。



皆の心に打たれながら、どうしてもある人の姿を探てしまう。


やはり・・・

そう思った時、見えた姿に再び熱い涙があふれた。


「だってあんな所に一人で残されちゃったら
 さびしいし・・・」


師匠・・・この人は、またこんな言い方をする。


本当は心配で来てくれたのだと知っているから、
師匠の照れ顔が嬉しくてたまらない。


あえて優しくしない、そんな優しさを
私に与えようとしながら・・・
最後まで冷たさに徹せずに、来て下さったのでしょう?

分かっていますよ、師匠。


なんて奥の深い、
優しい人なのだろう。




「あんな所に一人で残されちゃったらさびしいし・・・」



兄達二人の背を追い飛び続けるなか、
ふと先ほどの師匠の言葉が、脳裏で蘇る。



ああ。その通りだよね、父さん。



一人っきりで、さびしいに違いない。




皆で、父さんの正義を迎えに行こう。



会えることは叶わなくとも。

たとえ、骨を拾うことが叶わなくても・・・。



父さんが未来の為に戦ってくれたあの過去の日が、
今奇跡を起こし、遠くで眠る貴方の元へ届くように。

すべてが確かに、ここへ繋がっていたと示すために。



友を許し、待ち続けた会長と。
そして帰って来た、世直しマン。

父さんの戦友達と。


不可能を知りながら、戦う意味に心燃やし、
諦めず努力を止めぬ仲間達と共に。



ただ一つの、勝利を目指そう。


兄さんが、納得出来るその日に向かって。













「さよならの保留」(完)
 

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