二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□なんで気がつかなかったんだろう
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ああ・・・。
努力の声が遠い。

自分の目線の遥か下から、師匠〜!!と声を張り上げる
杉田努力に向かって、洋一は力なく笑顔を向けた。

「何とかします!!どぉすれば良いのか分りませんが・・・!」

叫ぶや否や、物陰に隠れて変身するあいつ。
突然現れた正義のヒーロー努力マンに、
遠巻きに眺めていたやじ馬達が歓声を上げる。

やっつけろ、だの、どこか遠くへ運んでくれ、だの、
ダーリンを助けて、と喚く人々を背に、
努力マンは洋一を見て。

「待ってて下さいっ!!」

顔を、クシャクシャにして飛んで行ってしまった。


残されたのは、ぽけ〜っと拍子抜けしたまま
彼が飛び去った方角を見上げるやじ馬達と。

「時間稼げ、ってことね・・・」

と、同じく空を見上げるドでかい洋一。

その空はいつもよりずっと近い。
ふと響く金属音に目をやれば、
地球防衛戦闘機・ウルトラフォーク&ナイフがこちらに向かい
すっ飛んで来ていた。

「ついてねぇどころの話じゃないよ、もぉ」

顔をひきつらせながら立ち上がり、
平均台を思わせる狭い道を、慎重に歩き逃げる。
街中であるにも関わらず、容赦なくミサイルを打ちこんでくる防衛軍に
「アホかお前らは!」とぶち切れながら。

洋一はひたすら考えてるのだった。



なんでボク、奈良の大仏よりビックサイズになっちゃってんの?!!と。






『なんで気がつかなかったんだろう』






ミサイル攻撃から街をガードしつつ歩くビック洋一。
ああ、特撮物のヒーローみたいだ、とどこか人ごとに思うも、
そんな自分に浴びせられるのは悲鳴と、やっつけろ!、の声ばかり。
ショックのせいか、やはり内心相当なパニックにでもなっているのだろうか。
脳から火事場の馬鹿力でも出ているらしく、痛みも熱さもあまり感じない。
打たれ強い自身の体に、こんな形で感謝する日が来るとは思わなかった。

ラッキーマンに変身したいのは山々だが、こうも目立っていては
隠れようがない訳で。


・・・やはりあの時の猫だ。そうに違いない。

洋一は一人、原因に違いない存在に的を絞った。
学校からの帰り道、くだらない会話をしながら帰宅していた師弟二人の前に、
急に黒猫が飛び出して来て。
とっさに避け、転びながら振り向いた瞬間_____

黒猫の両目が眩しく光り、
その中に包まれてしまった。
努力は上手く避けたみたいだけど、ボクはついてないから・・・。

はあ、ついてねぇ。と息を吐き、そこまで思いを巡らせる洋一少年。
分かった所で、こんな状態の自分ではどうしょうも出来ない。
気がついた時には姿を消していた猫・・・
たぶん完璧、侵略宇宙人だろう。
それを捕まえてみない事には。

とりあえず、努力には猫も探す様に頼んである。
今己に出来る事と言えば・・・悲しいかな、待つ事しかない。


気持ち、海があると思われる方向へ歩を進めつつ、
チャンス到来時にすぐ変身できるよう、ポケット内の
らっきょに手を伸ばす。


だが_____。
洋一は思わずその場で動きを止めてしまった。


変身らっきょが巨大化していないのだ・・・。

ポケットの隅から、やっとのことで手の平に転がした
らっきょビンは・・・。
情けないほどの小ささで、洋一を迎えた。

どう言う理屈なのかは分からないが_____。
これでは、らっきょを口にするどころか
爪の先ほどの大きさのビンを空けることすら出来ない。


どうすりゃ良いんだ、とさすがの洋一も途方に暮れている所に。
頼もしい一番弟子がすっ飛んで来た。

「努力ちゃ・・・努力マン!」

足元付近のやじ馬たちから、歓声が一気に膨れ上がる。

師匠!と言いかけた彼を「しっ!」と口元にあてた人差し指の
ジェスチャーで止める。
とりあえず、二人は正体を隠している。
ここで叫んでは、分かる人間には気づかれてしまうだろう。


ちょいちょい、と目の前に自称弟子を呼び____、

「今、ちょっと変身できそうに無いんだ」
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