二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦
□なんで気がつかなかったんだろう
1ページ/4ページ
ああ・・・。
努力の声が遠い。
自分の目線の遥か下から、師匠〜!!と声を張り上げる
杉田努力に向かって、洋一は力なく笑顔を向けた。
「何とかします!!どぉすれば良いのか分りませんが・・・!」
叫ぶや否や、物陰に隠れて変身するあいつ。
突然現れた正義のヒーロー努力マンに、
遠巻きに眺めていたやじ馬達が歓声を上げる。
やっつけろ、だの、どこか遠くへ運んでくれ、だの、
ダーリンを助けて、と喚く人々を背に、
努力マンは洋一を見て。
「待ってて下さいっ!!」
顔を、クシャクシャにして飛んで行ってしまった。
残されたのは、ぽけ〜っと拍子抜けしたまま
彼が飛び去った方角を見上げるやじ馬達と。
「時間稼げ、ってことね・・・」
と、同じく空を見上げるドでかい洋一。
その空はいつもよりずっと近い。
ふと響く金属音に目をやれば、
地球防衛戦闘機・ウルトラフォーク&ナイフがこちらに向かい
すっ飛んで来ていた。
「ついてねぇどころの話じゃないよ、もぉ」
顔をひきつらせながら立ち上がり、
平均台を思わせる狭い道を、慎重に歩き逃げる。
街中であるにも関わらず、容赦なくミサイルを打ちこんでくる防衛軍に
「アホかお前らは!」とぶち切れながら。
洋一はひたすら考えてるのだった。
なんでボク、奈良の大仏よりビックサイズになっちゃってんの?!!と。
『なんで気がつかなかったんだろう』
ミサイル攻撃から街をガードしつつ歩くビック洋一。
ああ、特撮物のヒーローみたいだ、とどこか人ごとに思うも、
そんな自分に浴びせられるのは悲鳴と、やっつけろ!、の声ばかり。
ショックのせいか、やはり内心相当なパニックにでもなっているのだろうか。
脳から火事場の馬鹿力でも出ているらしく、痛みも熱さもあまり感じない。
打たれ強い自身の体に、こんな形で感謝する日が来るとは思わなかった。
ラッキーマンに変身したいのは山々だが、こうも目立っていては
隠れようがない訳で。
・・・やはりあの時の猫だ。そうに違いない。
洋一は一人、原因に違いない存在に的を絞った。
学校からの帰り道、くだらない会話をしながら帰宅していた師弟二人の前に、
急に黒猫が飛び出して来て。
とっさに避け、転びながら振り向いた瞬間_____
黒猫の両目が眩しく光り、
その中に包まれてしまった。
努力は上手く避けたみたいだけど、ボクはついてないから・・・。
はあ、ついてねぇ。と息を吐き、そこまで思いを巡らせる洋一少年。
分かった所で、こんな状態の自分ではどうしょうも出来ない。
気がついた時には姿を消していた猫・・・
たぶん完璧、侵略宇宙人だろう。
それを捕まえてみない事には。
とりあえず、努力には猫も探す様に頼んである。
今己に出来る事と言えば・・・悲しいかな、待つ事しかない。
気持ち、海があると思われる方向へ歩を進めつつ、
チャンス到来時にすぐ変身できるよう、ポケット内の
らっきょに手を伸ばす。
だが_____。
洋一は思わずその場で動きを止めてしまった。
変身らっきょが巨大化していないのだ・・・。
ポケットの隅から、やっとのことで手の平に転がした
らっきょビンは・・・。
情けないほどの小ささで、洋一を迎えた。
どう言う理屈なのかは分からないが_____。
これでは、らっきょを口にするどころか
爪の先ほどの大きさのビンを空けることすら出来ない。
どうすりゃ良いんだ、とさすがの洋一も途方に暮れている所に。
頼もしい一番弟子がすっ飛んで来た。
「努力ちゃ・・・努力マン!」
足元付近のやじ馬たちから、歓声が一気に膨れ上がる。
師匠!と言いかけた彼を「しっ!」と口元にあてた人差し指の
ジェスチャーで止める。
とりあえず、二人は正体を隠している。
ここで叫んでは、分かる人間には気づかれてしまうだろう。
ちょいちょい、と目の前に自称弟子を呼び____、
「今、ちょっと変身できそうに無いんだ」