二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□二文字の贈りもの
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『二文字の贈りもの』








あれは何時の事だっただろう。

ママにパパを呼んで来るように頼まれ、書斎を覗いたボクの目に、
いつも通り居眠りしている背中が見えて。
ひどく疲れていたその日のボクは、声をかける気も失せ、
そのままリビングに戻ってしまった。

「あら?パパは?」

「見てみれば分かるよ。また例のごとく、いつもの調子〜」

投げやりなボクの返答に、ママは笑いながら仕方のないパパね、と
書斎の方向に目をやった。
自覚がある程度に、バテてやる気の無いボクを
ママは単純にお腹が減っていると判断したようで。
先におやつ食べちゃいましょ、と
いたずらっぽく告げて、テーブルへ自慢のクッキーを並べ始める。
特別、告げた事なんてないけどママのクッキーは大好きだ。
香りにつられ、しかめっ面のまま、
手だけは素直にちょいちょいクッキーにのびてしまうボク。
キッチンから優しい視線を感じ、思わず
「ミルク無い〜?」とてれ隠しの声をあげた。


書斎の方向からは、カタリとも音がしない。
その静かさに、先ほどのパパの姿が脳裏にハッキリとよみがえり。

「真面目に何か書いてるとこなんてボク見た記憶ないよ、ホントにもぉ〜・・・」

思わずダイングテーブルに突っ伏す。
これから先、この家は大丈夫なのだろうか。
どうにか生活には困らないとは言え、やあ菜もいる訳で。
ここは、今後の妹の為にも少しはカッコいい所を見せてほしい。
妹が物心つく頃には、たぶん自分はココにはいられないのだから___。

テーブルに顔を伏せたまま、黙り込んだボクをママはどう思ったのだろう。
そうねぇ〜・・・、と言いながら、ボクの前に温めた
ホットミルクをそっと置き、隣に腰かけた。


「ママは、ウ〜ンウ〜ンって唸りながら物凄〜く考え込んでた
パパを知ってるわよ」

「え?!!それホント?!・・・実はトイレで、とかってオチじゃないよね?」

「もうっ、おやつの時間に汚い事言わないの、洋ちゃん」

ボクのおでこをチョン、と突いてから


「その小説、結構評判良かった?」

恐る恐る尋ねたボクにママは小さく微笑む。

「知りたい?」

「・・・うん」

「ママはとても素晴らしいと思っているわ」


____それはね・・・_____










    



 ___大宇宙神様・・・


起きて下さい、大宇宙神様___



「・・・あ・・・?」


ぼわ〜、と顔を上げると。
書類の山のむこうで、
小さくため息を吐くおつきマンがいた。


「さあ、一息入れて下さい。あともう少しですから」

片手で手際よく、
私を急きたてる様に存在感のある
目前の机の上に簡単な空きスペースを作り、
やわらかな湯気をたてるカップを静かに置いてくれる。



それは、温かなミルクで。


カップに手をのばし、おつきマンに微笑む。

「よくね、ママが・・・私の母がこうしてくれた。
寒い日はかならず、わざわざミルクを温めてくれてさ」

そうでしたか、と私を見つめる彼から、
へへ、と視線を落とす。


「あと少しで、帰れますよ」

「え」

と、再び顔を上げれば。

「地球に。ひとまずこの仕事を終えたなら」

優しく微笑むおつきマンがいた。


地球に帰れる。

それは大宇宙神に対し告げた言葉と言うよりも。
目前の仕事を終えたら、地球上まで「散歩」と称して
ロケットで出掛け、
そこから、人知れず地球に寄り道する青年に対しての言葉。


「・・・皆、老けちゃってるかな」

「大丈夫ですよ。地球時間にして約3年、と言ったところですから」

まだ3年。もう、3年。

時間感覚のすれ違いを表情に表さぬまま、
ありがとう、と笑った。



空になったカップを手渡しながら、
思いきりのびをする。

「んじゃ!仕事片付けちゃお〜う!!」

「その意気です!大宇宙神様」



_____ママは、ウ〜ンウ〜ンって唸りながら物凄〜く考え込んでたパパを知ってるわよ_____


____それはね・・・




洋ちゃん、貴方の名前を考えていたときよ______



心の奥で。
パパとママが、洋一、と。
そして、皆がボクの名を呼ぶ声が聞こえた気がして。



あふれてくる熱いものを、ボクは、
どうにも我慢できそうになかった。













(完)
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