二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□再会〜星のかけら2〜
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耳にふれる風がふいに寒くなり、ハッと顔を上げた時には
杉田君の姿が見あたらなかった。
不安げに見回すボクの遥か彼方後ろの方角から、
爆音と歓声がかすかに聞こえてきた。
耳をすましてみればなるほど、
どうも侵略宇宙人と努力マンが一戦交えているらしい。

このままここで待とうか。それとも。
空は、もう茜色に夜の色を溶かしはじめていた。



『・・・動かない方が良かったケン』
すれ違いを防ぐためにも、あまり動かない方が良いと分かってたのに。
あのままあの場所で日が沈むまでいたくない気がして。
思わず騒音のする方へと駆け出したボクだったが、
案の定みごとに努力マンとすれ違ってしまったらしい。
戦闘現場に着いた時には全て決着した後だったうえ、
おまけに迷子になってしまった。

あの責任感の人一倍強いヒーローの顔が目に浮かび、
今頃必死に探してくれてるだろう彼に謝りたくなる。

項垂れつつ、さてどうしたものかと思案し始めた時。
鼻先に一つの香りがぶつかった。
決して強い香りではない。
風にのって、そのまま溶け消えてしまいそうなそれは
何故かボクの心をくすぐった。
ふらふらと導かれる様にたどり着いたその先に、
あのお屋敷は、そびえていた。


門の外灯には、早くも灯りが灯っており、
来客でもあるのか、屋敷の前には花屋の車が着けてある。
開かれた門の奥にぼやけて見えた小さな女神の石像に、
ボクは見覚えがあり。
外灯の光と夕闇の光の間で、座り込んでしまった。
動く事も出来ないボクの前で、人間達が忙しなく花々を
運び入れていく。
そのどの顔も、ボクの知らない顔だったが、
屋敷の中から聞こえてきた指示を出すあの声は、
記憶の奥、あの日この屋敷で、
ボクが最後に聞いた人のものの様だった。

まるで、絵本の世界の様に飾り付けられてゆく光景を
遠巻きに眺めているうちに、ボクは
帰ろう、と手足に力を込め立ち上がった。

あの日帰りたかった場所は、もう違う場所に見えたから。

くるりとお屋敷に背を向けたとき、小さな気配に振り向いた。
開かれた門、小さな女神の石像の足元から顔を覗かせていたのは、
紛れもなくボクの母犬だった。
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