二次創作小説・・・ぽいものへの挑戦

□星のかけら
5ページ/6ページ

努力マンが中腰になりながら、頭をワシワシとなでてくる。
まるで、その表情を見られまいとするように。

「食えないよ、あれは。腐ってる。」
「・・・クゥーン・・・」
「ラッキーが倒れこんでるのかと驚いたんだぞ。」
言って、やっとその手をどかす。
その顔は優しく微笑んでいた。
空を指差し示した彼は、
「丁度、侵略宇宙人が出てな。それを片づけて飛んでたんだよ。
・・・気がつけて良かった。」

このヒーローは。
自分の一番大切な少年の、いつもそばにいた彼は。
空から、追手内家を見ながら飛んでいたのだろうか。
今、少年はこの家にいないのだと言うのに。
そして、その理由も分かってて。
・・・理解しているだろうに・・・。

諦めがつかず、犬小屋裏の掘りおこされた土の方を見つめる。
ふっ、と努力マンが自分の横を通りゆき、視線の先、一粒のらっきょに手を伸ばした。

「!!?ワンッ・・・!!」
止める間もなく、濃い土気色をしたそれを口に放り込み・・・飲み下してしまった。

「・・・やっぱりダメだ、な。」
ぼう然と見上げる自分の前には、何とも言えない苦笑いを浮かべる努力マンがいた。
「こんなの食べて、ラッキーに何かあったら師匠が悲しむぞ。」
言いながら近づいてくる努力マンの顔は・・・
ちっともヒーローらしくなかった。
「苦いな」
言って、空をあおぐ。

「今なら私は・・・」
言葉の後半は小さく、聞きとれなかった。

じっと立ち尽くし、空を見上げる背中を見て。
静かに気がついてしまった___。

自分の主人は、・・・洋一君は。
ずっと戦っていたから。
らっきょが腐らなかったのは、ただ・・・
腐る時間が無いほどに、変身しなければならなかっただけなんだ___。

そして今も。



___理解できてなんかいやしない___

たた、理解してるかの様に。あふれ出さない様に、
自分に言い聞かせてるだけ。

しかた無い、ついてない、と。


努力マンが少し驚いて、足元の僕をみた。
・・・自分から、努力マンの傍へ行くのは初めてだったかもしれない。

努力マンは小さく微笑んで、また静かに空を見上げた。


愛してるのに、何より大事なのに。
それを我慢しなきゃイケナイって何なんだろう。
愛してるのに、何より大事なものを・・・
捨てるんだと、忘れろと強制される者の心は。



紅く染まり始めた空に、ただ一人の人を想った。
穏やかな笑顔の、赤いスーツの英雄。
その影にいる、不運で。ついてなくて。
それでも、明日はきっと良い事があると信じて生きる、

あの少年を。

少年が戦い続けているのなら。

自分も、待ち続ける。理解なんてするすきの無いほどに、戦い続ける。
待ち続ける。
見たいものを、まだ見ていない。
自分の意志で生きる。絶望なんてもうしない。

立ち尽くす犬と、ヒーローであろうと努力するヒーローと。

その後ろに建つ、静寂に満ちた小さな家。


平和な宇宙の片すみで。
小さな小さな一つの限界が迫っていた。






    _完_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ