話1

□honey sunday
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ふわり

 水気を含んだ朝霧のにおい。
 香るハニーミルクのあまい湯気。
 ふわり

 日曜の朝、寝起きのまま窓辺にたって、カップを片手に景色をぼんやりと眺めていた。獄寺君の淹れてくれるミルクは格別だ。はちみつの調合がなんとも絶妙で、ほっとする やさしい味がするからオレはとても気に入っている。あまいあまい いい香り。
 そこへ、ふわり 煙草のにおいがした。向けば視界を遮るように手のひらが降ってくる。額におかれ 髪を指で梳きはじめたそれ。ふわりさらさら やさしい手つきで気持ちが良い。
 だけど、これじゃあ君の顔がみれないんだ。

「 なに?」
「いえ別に」
「…ねぇ、顔みえないよ」

 ミルクを一口含み舌で転がす。ふわりまた香りが鼻先を抜けて、そしてこくりとあたたかく咽をとおる。はちみつのあまったるさと 君の笑顔にくらくらした。朝焼けに照らされた獄寺君の顔は、きらきらと光っていて眩しい。

「おはようございます十代目」
「ん、おはよ」

 ぎゅうと抱きしめられる。カップの中の水面が揺らいで、一層あまい空気がただよった。
 獄寺君はパジャマの下だけを履いていて、上半身は裸だ。いつものことだけれど、こうして抱きしめられると彼の肌を直接に感じて なんだかオレはドキドキしてしまうのだ。半身になにも繕っていない彼と、朝からこういったじゃれあいをするのはすこし刺激が強い気がする。実際心臓が騒いでいてうるさい。
 その思いを知らずに、獄寺君は相変わらず髪を綻ぶ手を止めず オレはされるがまま。でも触られるのは好きだからそのままにしておく。彼の胸板に体重をかけたら抱きしめる力が強くなった。

「…獄寺君、さっきから髪触ってばっかだね」
「いやですか?」
「ううん、そんなことない。寝癖でもついてたのかなーって思ってさ」
「大丈夫、ついてませんよ。 …こうして、あなたに触れていると落ち着くんです」

 十代目の飲むハニーミルクと 同じ効用があるんですよ。そう言って髪に顔を埋めて キスをして、彼はくちびるにも同じことをした。

「あまいですね」

 ………この顔は反則。しあわせそうな顔で笑いやがって、なんだか胸の奥がくすぐったい。落ち着くのはオレだって同じだ。

「…はちみついれたのはごくでらくんだよ」
「そうでした」






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