浅き夢見し恋せよ乙女
□嘘から始めよう
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わたくし美雨(17)は只今今までにない危機に直面しております!!
なんと!明日までに提出の課題を教室に忘れてきちゃったわけですよーっ!!!
提出課題の担当である最上先生は怒っても全然怖くないんだけれど、それ以上に何かとめんどくさい事態に陥るのでなんとか避けたいところ。
幸いにも思い出したのが学校の正門を出たところだったので、そこからダッシュで廊下を駆け抜けて教室の前までやって来たわけですが…
教室で、ドラマのワンシーン的なことが起こりかけてるとかいう何ともタイミングの悪い事態が発生しているわけです。
簡単に言うと、
ドキドキ☆放課後、憧れの彼を教室に呼び出して…
といった感じの青春の代名詞とも呼べるアレである。
まあそんなシチュエーションなんて滅多にお目にかかれないので、興味深々な私はこっそりと教室の入り口の窓から中の様子をうかがっているのですが。
「私ずっと前から政宗くんのことが好きで、伝えたくて…」
聞こえてくる話の内容的に、告白したのは女の子のほうらしい。
そのお相手はー…あの妙にセクシーな低音ボイスを発する男子はー…そうだ!政宗くんだ!!
政宗くんといえば頭脳明晰、容姿端麗…まあ簡単にいえば全てにおいて完璧なモテ男くんだけど…どうするんだ!付き合うのか!OKか!女の子なかなか可愛いぞ!!
「…sorry、気持ちは嬉しいんだが…」
「もしかして、彼女いる、とか…?」
「ん…あぁ、いる」
「誰?教えてくれたら、きっぱりと諦めるから…」
うっわー断ったああ!!
クールに断ったああ!!
ていうか、まじか!!政宗くんて彼女いたんだ!!
うっわ、すっごく知りたい!!
誰?誰なんだ一体!!
ガラッ
「ぉわっ!!?」
声が聞こえなくなったので、どうしたのかとピッタリ耳をドアにひっつけていると、
いきなりドアが開いて、私はバランスを崩し教室内に倒れこんでしまった。
「っいった〜…」
「こいつだ」
「…へ?」
「こいつがオレの彼女だ」
目の前の政宗くんは、間違いなく私を見ている。
でも、今彼女の話をしてたんじゃ…
「大丈夫かhoney、随分と派手に転んだな。まあそういうところもなかなかcuteだが」
「え?え?」
政宗くんは手を差し伸べると、ヒョイっと私を立ち上がらせてくれた。
「あ、えっと…」
「どうしたhoney」
「あの、意味がわか…」
言いかけて私は止めた。
政宗くんがものすごいオーラを放ち、目で訴えていたからだ。
『話を合わせろ』と。
「悪かったなhoney、随分と待たせちまって」
「…う、ううん!大丈夫、全然気にしてないよっ!政宗く…政宗のためなら何時間でも待つもん!」
思わず今まで出したことのない違和感バリバリの声が口から飛び出した。
誰だ今の。
「政宗くんの彼女って青葉さんだったのかあ…」
「んじゃあそういうわけだ」
政宗くんは私の手を引くとそのまま教室を出ていった。