浅き夢見し恋せよ乙女
□ずっとそばにいて
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私の大切な人は、飄々とした性格で、根っからのオカン気質で、仕事着が派手で、全然忍らしくないのに忍隊の長をやってたりして、なんだかよく掴めない人です。
けれど、私のことを一番よくわかっている人です。
そのやり取りは毎日当たり前のように城内に響き渡ります。
「佐助〜!!」
「はいよっ、どうしたの?おやつならまだでしょ?」
いつも、
「佐助ぇー…」
「はいはいっと、気分でも悪いの?漢方薬持ってきたよ」
何処でも、
「佐助ええ!!」
「なーに、旦那とケンカでもした?」
どんなときでも、
「佐助ぇ〜…」
「……」
「っひくっ…さすけぇ何処ぉ〜…ぐすっ…」
「…っ、も〜っ美雨ちゃんたら、これじゃかくれんぼにならないじゃないの」
「うぅ…」
私は、佐助が大好きです。
だから、大好きな佐助が目の前から消えてしまうことが、返事をしてくれないことがとても怖いから、私はかくれんぼで鬼をするのが苦手です。
見つけてもらうのは大好きなんだけどなあ…
いつも自分から飛び出して行っちゃうから成り立たないのは結局同じことなんだけど。
「…っぅ、佐助…あのね…」
「大丈夫、言わなくたってちゃあんとわかってるからさ」
抱きしめられた瞬間に鼻をくすぐった佐助の匂い。
大きな手に心地よい体温。
それだけでもう十分で、私はそれ以上言うのを止めました。
ずっとそばにいて
(それだけで、充分幸せだから)
END.