浅き夢見し恋せよ乙女
□私には効かない
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「政宗どのァァァ!お慕い申し上げておりまするァァァァ!!!」
「訳わかんねぇぇ!!!寄ってくんなァァァ!!!」
昼休み、することもなく退屈だったからいつものように騒がしい奴らのいる教室へと美雨は向かった、
ら、こんなことになっていた。
「佐助、あれ何?」
「あ、美雨ちゃん。あれ?あれは旦那の新境地」
「わけわからんわ」
俺様もわけわかんないよ。
とかなんとか軽く言ってのける佐助。
なんだ新境地て。
どうやら幸村は新しい世界の扉を開いてしまったようだ。
「一体何があったの?」
「簡単に言うと、旦那は松永先生が持ってた(如何にも怪しい)お菓子を躊躇なく食べちゃって、偶然にもそれには惚れ薬が含まれてて、その結果があれだよ」
「それ絶対に偶然じゃないよね」
「俺様もそう思う」
二人が向けた視線の先には、何が起きているのか原因がまったくわからないまま必死に逃げる政宗と、それを素晴らしいスピードでハートを飛ばしながらイキイキと追いかける幸村の奇妙な光景が広がっている。
「てか、なんで政宗が選ばれちゃったわけ?」
「ほら、ヒヨコって生まれたとき最初に目に入った動くものを親と見なすじゃない?」
「食べて最初に目に入って動いてたのが不運にも政宗だったと」
「そゆこと」
哀れ政宗、君に幸あれ。
とりあえず美雨は政宗に向けて合掌しておいた。
「まったく、幸村も警戒心てものを持たなきゃ駄目だよ。松永先生も面白がって毎回あの二人にちょっかい出してくるし」
「…けど、あんなに効くなら俺様も使ってみたいなー、なんてね」
「え?佐助って好きな子いるの?」
そう言って美雨は、不思議そうな目で佐助を見た。
すると、そう聞かれるのを待ってました!と言わんばかりに顔に笑みを浮かべる佐助。
「うん。俺様ね、美雨ちゃんのこと「まあ私だったら効かないけどね♪」
重要な部分を見事に遮られ、佐助は少し残念そうな顔をした。
偶然、というよりも故意に遮られた気がしたからだ。
しかしそこは猿飛佐助、慣れっこだと(少し涙目で)軽く受け流し会話を続ける。
「それはないでしょー。だってあの松永先生が作ったものだし」
「絶対に効・か・な・い」
「効ーく!」
「効ーかーなーいっ!」
何度繰り返しても依然として自分自身の言葉を頑なに主張し続ける美雨。
そこまで言い続ける理由は一体なんなんだ。
「…じゃあ、美雨ちゃんはなんでそう思うわけ?」
何度か効く効かないと同じやり取りを繰り返した後、佐助は少し呆れながらそう聞いた。
すると美雨は今まで繰り返していたものとはまったく別な答えを述べたのだ。
「だって惚れ薬って、惚れてないから効くんでしょ?」
「そりゃそうだよ…って、え?」
今の二人の耳に政宗の必死のSOSなど届くはずがない。
私には効かない
(ねえ、今のって…)
(え?)
END.
軽く告白したことに自分で気が付いていないヒロインちゃん。
この後しばらくしてから気づきます(∀`*)
そしてほんわかした二人の背景で政宗さん貞操の危機(笑