浅き夢見し恋せよ乙女
□甘さ染み込む
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今日は待ちに待った10月31日。
そう、今日はハロウィン!!
「…と言うわけで、trick or treat小十郎!!お菓子出せ!!!」
「随分と図々しくて派手な魔女が来たな」
「えへー今日の日の為に頑張りました☆衣装制作費なんと5000円!」
「お前なあ…」
苦い笑みを顔に浮かべるも
まあ入れ、待ってたんだ。
と、小十郎は私を家の中へ招き入れた。
根っから料理上手な我が恋人。
期待していいぞとか言ってたけど、一体何を作ってくれたんだろ。
ガチャ
「ほらよ、好きなだけ食え」
「っな、どぅええええ!??」
リビングへのドアを開き、中を覗き込むと美雨は思わずおかしな声をあげた。
それもそうだ、モノトーンを基調として綺麗に整えられたリビングに、溶け込むように置かれたシンプルなテーブル。
いつもは何も置かれずさっぱりしているのに、今日ばかりは一味違った。
「まったくもって予想外」
だってそこには所狭しと並べられたスイーツの山があったから。
しかも、なんか輝いてる。
眩しい、眩しすぎる。
お菓子ってこんなに光放つもんだっけ!?
「…何してんだ?」
「へ?」
隣には不思議そうな顔をした小十郎。
目の前には何の変哲もないお菓子たち。
そこにおかしな格好で手を前にかざし顔をカバーしている私。
その光景はあまりに奇妙。
あれ、輝いてない。
幻でも見たか私。
「まあお前が変なのはいつものことだから今更気にしねえけどよ」
「軽く心に刺さった」
「冗談だ、冗談」
小十郎は笑いながら私の頭をポンポンと優しく叩いた。
何というか、反則だと思う。
そんな顔されたら、怒る気なくなっちゃうじゃんか。
「ずるい」
「?何か言ったか?」
「なんでもないっ、早くお菓子食べよ!」
呟いた言葉を、別な話題へと切り替えてそれとなく誤魔化す。
今まで何回誤魔化したんだかわかんないや。
いただきますっ!と早口に言うと目の前にあったものを選ばずに手に取り、口に放り込んだ。
口の中に上品でなめらかな甘さが広がっていく。
あれ?なんか、あれ…?
「どうかしたか?」
「…もしかして、これ全部野菜から出来てる?」
私の質問に彼は平然と答えた。
「当たり前だ、甘ぇだけじゃ身体に悪ぃだろ?」
そりゃそうですが。
よくよく見てみれば目の前は野菜を連想させるスイーツばっかり。
トマトゼリー、スイートポテト、かぼちゃプリン、ゴボウとホウレンソウのドーナツ、キャロットケーキ……
数えたらキリがない。
そして超美味い。
それでもさすがに、
「ネギは…使わなかったみたいだね」
いくらネギを愛しててもそこまではさすがに……
「あぁ、最初は生クリームに混ぜてみようと思ったんだが、政宗様に必死の形相で『頼むから止めてやれ!!!』と言われてな」
「え、あぁ、そっか…」
政宗…!!!!
こないだ馬鹿宗って言ったの取り消すよ!!
内心ガッツポーズをとった私。
隣で小十郎は「何をあんなに必死だったのだろうか…」とか不思議そうにぶつぶつ呟いている。
野菜のことになると一気にボケキャラ入っちゃうんだよね、この人は。
そーゆうとこも好きなんだけどさ。