浅き夢見し恋せよ乙女

□甘さ染み込む
1ページ/2ページ

今日は待ちに待った10月31日。
そう、今日はハロウィン!!




「…と言うわけで、trick or treat小十郎!!お菓子出せ!!!」

「随分と図々しくて派手な魔女が来たな」

「えへー今日の日の為に頑張りました☆衣装制作費なんと5000円!」

「お前なあ…」




苦い笑みを顔に浮かべるも
まあ入れ、待ってたんだ。
と、小十郎は私を家の中へ招き入れた。


根っから料理上手な我が恋人。
期待していいぞとか言ってたけど、一体何を作ってくれたんだろ。




ガチャ




「ほらよ、好きなだけ食え」

「っな、どぅええええ!??」




リビングへのドアを開き、中を覗き込むと美雨は思わずおかしな声をあげた。
それもそうだ、モノトーンを基調として綺麗に整えられたリビングに、溶け込むように置かれたシンプルなテーブル。
いつもは何も置かれずさっぱりしているのに、今日ばかりは一味違った。




「まったくもって予想外」




だってそこには所狭しと並べられたスイーツの山があったから。


しかも、なんか輝いてる。
眩しい、眩しすぎる。
お菓子ってこんなに光放つもんだっけ!?




「…何してんだ?」

「へ?」



隣には不思議そうな顔をした小十郎。
目の前には何の変哲もないお菓子たち。
そこにおかしな格好で手を前にかざし顔をカバーしている私。
その光景はあまりに奇妙。



あれ、輝いてない。
幻でも見たか私。




「まあお前が変なのはいつものことだから今更気にしねえけどよ」

「軽く心に刺さった」

「冗談だ、冗談」




小十郎は笑いながら私の頭をポンポンと優しく叩いた。


何というか、反則だと思う。
そんな顔されたら、怒る気なくなっちゃうじゃんか。




「ずるい」

「?何か言ったか?」

「なんでもないっ、早くお菓子食べよ!」




呟いた言葉を、別な話題へと切り替えてそれとなく誤魔化す。
今まで何回誤魔化したんだかわかんないや。


いただきますっ!と早口に言うと目の前にあったものを選ばずに手に取り、口に放り込んだ。
口の中に上品でなめらかな甘さが広がっていく。



あれ?なんか、あれ…?




「どうかしたか?」

「…もしかして、これ全部野菜から出来てる?」



私の質問に彼は平然と答えた。



「当たり前だ、甘ぇだけじゃ身体に悪ぃだろ?」



そりゃそうですが。



よくよく見てみれば目の前は野菜を連想させるスイーツばっかり。
トマトゼリー、スイートポテト、かぼちゃプリン、ゴボウとホウレンソウのドーナツ、キャロットケーキ……
数えたらキリがない。

そして超美味い。



それでもさすがに、



「ネギは…使わなかったみたいだね」




いくらネギを愛しててもそこまではさすがに……




「あぁ、最初は生クリームに混ぜてみようと思ったんだが、政宗様に必死の形相で『頼むから止めてやれ!!!』と言われてな」

「え、あぁ、そっか…」




政宗…!!!!
こないだ馬鹿宗って言ったの取り消すよ!!



内心ガッツポーズをとった私。
隣で小十郎は「何をあんなに必死だったのだろうか…」とか不思議そうにぶつぶつ呟いている。


野菜のことになると一気にボケキャラ入っちゃうんだよね、この人は。
そーゆうとこも好きなんだけどさ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ