浅き夢見し恋せよ乙女

□そのままでいいの
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いつだっただろう。
この感情が生まれたのは。
いつからだっただろう。
彼女が、変わり始めたのは。





「みーうちゃんっ♪」




俺は、目の前の儚さと優しさを帯びたその背中に思い切り抱きついた。




「ひぁっ!?///」




忍だし当たり前なんだけど、
その子は俺の存在に気がついていなかったようで、
ピクンと身体を小さく跳ねさせた。
んー、反応が可愛いねぇ♪




「さっ、佐助様!?///」

「んもー、佐助でいいって言ってんのにぃー」

「っ、ですがっ…」





小さい頃からの付き合いだってのに美雨ちゃんの態度とか話し方は昔から変わらずすごく上品だ。
しかも、そこらの女以上の美貌を持ち合わせてる。
今まで何回、結婚の申し込みされたんだか…
全部断ってるみたいだけど。





「それで佐助様、私に何か、御用があったのでは…?」




美雨ちゃんは可愛いらしく小首を傾げ俺に聞いてきた。
透き通ったビー玉みたいに
無垢で汚れのない綺麗なその瞳には、俺だけが映ってた。




「特に用はないんだけどね、
急に美雨ちゃんに会いたくなっちゃって♪」

「わ、私に、でございますか…!?///」




嬉しゅう…ございます…///




小さくそう言って俯いた美雨ちゃんの顔は、綺麗な紅色に染まってた。




「あは♪美雨ちゃんかーわいvv」

「そんな!冗談は、ほどほどにしてくださいまし…//」

「えー、ほんとなのにー」




本当に、無性に会いたくなったんだもの。
俺に向けてくれる笑顔が、声が、あまりに優しくて温かくて、
恥ずかしがるその姿が、どうしようもなく愛しくて。


いっつも冗談みたいに
可愛い可愛い言ってる俺様だけどさ、
本気で、惚れ込んじゃってるんだよ?

誰にも、渡したくない。
何処かへ連れ去ってしまいたい。
俺だけの、ものにしたい。


俺がそんなこと考えてるなんて
きっと気づいてすらいないんでしょ?
ねえ、美雨ちゃん…





「佐助様?どうか、なされたのですか?」

「へっ?」



気がつくと不思議そうな顔をした美雨ちゃんが俺の顔を覗きこんでた。
いっけね、ついつい考えこんじゃってたよ。




「あーうん、ちょっと、考えごとをね」

「お仕事のことでございますか?」




美雨ちゃんのこと。
なんて言えるわけないしね、俺は適当に誤魔化した。




「そんな感じかな」

「佐助様、最近休まれておいでにならないのでは…
無理を、なさらないで下さいまし…」




ちょっと…その顔反則じゃない?




「優しいねえ、美雨ちゃんは…
んじゃま、お言葉に甘えてちょっくら休ませて頂きますよっと♪」




ゴロンと仰向けに寝転がると目の前には驚く美雨ちゃんの顔があった。




「さっ佐助様!?何を…!///」

「んー?休憩♪」

「ですがこれではっ、ひっ膝まく…!///」

「あはは♪美雨ちゃん照れてるー♪」

「〜〜〜っ!!!///」





可愛い、可愛い、すっごく可愛い。
その紅色の柔らかそうな唇を貪るように奪ってやりたい。
その澄んだ瞳を自分の手で潤ませてやりたい。
その全てを、俺だけのものに、俺一色に、染めてやりたい。

男なら誰でも、そう思うんだろなぁ…





「あの…佐助、様…」

「ん?なぁに?」




言葉を返すと美雨ちゃんは
何か言いたげな顔をしていた。




「どーしたの?」

「あの、私、さ、佐助様を…そのっ…」

「?」




「…いえ、なんでもありません…気になさらないで下さいませ…」



しばらく待ったけど、美雨ちゃんの口から全ては紡がれてこなかった。




そのときは
「そっか」なんて相槌を打っただけで、なんの違和感も覚えてなかったけど、
きっと、その日が始まりだったんだ。

彼女が変わりだした、全ての始まりの日。


ねえ、美雨ちゃん。
俺に、何を伝えたかったの?
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