浅き夢見し恋せよ乙女

□七夕の願い星
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『執務をこの世から抹消したい』

『真田幸村ァァァ!と一騎討ちしたい』

『新しい武器欲しい』

『てか戦する暇あんなら美雨とイチャついてたい』

『美雨しかいらない』


「……」


オレと美雨以外のこの世に存在するもの全滅しろ


「何怖い事書いてんですか、政宗様」

「おぉっ!?驚かすなよ小十郎」

「そんな短冊見せられたこっちの方が驚きましたよ」





そうか?なんて首を傾げて言う彼の横には、
元々は薄っぺらい一枚の紙であるはずの短冊が綺麗に積み上げられ、
もはや分厚いひとつの塊と化していた。




「これ、笹に提げといてくれ」

「これ全てを、ですか?」

「Yes.当たり前だろ?」




(大半はくだらないことが書かれた)大量の短冊を前にして、
彼の家臣である片倉小十郎はふっかーく溜め息をついた。
(もちろん心の中で)



何処で育て方間違えたかな…




『お行儀の悪いお客さんにはお仕置きだ』





チラッと見えた短冊の一部。
もう願いごととか関係ないやん。





「まったく…美雨様を見習われてはいかがです?
先程、短冊を吊るして欲しいといらっしゃったのですが、持ってこられた短冊はたったの一枚でしたよ」

「は!?マジかよ」

「マジです、これがそうです」




小十郎が取り出した一枚の短冊には、可愛らしい小さな文字がちょこちょこと書き並べられていた。




『日の本が平和になりますように』




「!!」

「政宗様とは大違いでしょう?なんと心の優しい…」

「honeeeeey!!!!」




途端、部屋の襖が盛大に開かれたかと思うと、
気づけばそこに主の姿はなかった。





「…本当に可愛らしいお方ですよ、あの理由を聞かされれば…」




小十郎は手に持った短冊の文字を見返すと静かに笑った。






○●○●○●○



「ハニィィィィィィっ!!!!」



楽しそうに笹に飾り付けしている美雨を見つけると、
政宗はその背中に思い切り抱きついた。


「ぅわあっ!?政宗様!?いきなりいかがなされたのですか?」


「あの短冊どーゆうことだよ!!」

「?短冊がどうかしたのですか?」

「なんでオレのことひとつも書かねえんだよーっ!!」

「は…」




あー、ツッコみたい?
でしょうねえ。
まぁ、温かい目で見てやってくださいな。
本人いたって真剣なようなので。




「オレはちゃんと(短冊の半分以上)書いたのに…」




口を尖らせて拗ねる政宗を見て、
初めは驚いていた美雨だったが
その口をは少しずつ優しい弧を描いていった。




「そのつもりで、書いたのですがねえ…」

「Ah?」



政宗は首元に埋めていた顔をゆっくりとあげた。
顔と顔の距離が近くてすっごくどきどきしたのは美雨だけの秘密だ。




「確かに日の本が平和になりますようにって書きましたよ、
今の私の一番の願いはそれですもの」



でも、それだけの意味を込めたわけじゃないんですよ?



「日の本が平和になれば、戦がなくなりますでしょう?
そうしたら、政宗様とずっと一緒にいられるではないですか」

「!!」




きゅうううううん。

今の感情を簡単に表せばこうなる。
にっこりと微笑む美雨に動悸の乱れと急激な心拍数の増加を感じました。




なんてcuteなこと言いやがるんだ、こいつはっ…!
オレの願いなんざ…ガキ同然だな。



政宗は美雨の体を自分に向き合わさせると、再び強く抱きしめた。





「まっ、政宗様っ…///?」

「…お前の願い、オレが叶えてやる」

「え…」

「オレが天下を取っちまえばいい。日の本を治めりゃいい。
そうすりゃ世の中平和になって、ずっと一緒にいられるんだろ?」

「!…はい」

「お前の願いは、オレの願いだ。
絶対に叶えてみせる、それまで待ってろ。Are you ok?」

「はいっ…!!」






夜空に輝く願い星。
その日、二人は胸に願いと想いを掲げた。
誰にも壊せやしない、堅い、堅い、ひとつの願い。

星は見守ってくれていた。
けれど、掲げた願いを叶えるのはきっと、


他の誰でもない、彼ら自身。





END.

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