浅き夢見し恋せよ乙女

□今日は何の日?
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「hey美雨!今日はなんの日か知ってるか?」





自室で執務をしていたときのことだ。
襖がスパンっ!といい音をたてたかと思うと、そこには主である政宗が立っていた。
表情からして大変ご機嫌のようである。
この顔は何か企んでいるな…そう思った。






「どうしたのですか急に」
「いいから!知ってるか?」
「今日は5月5日…端午の節句では?」
「that's right!正解だ!」





美雨が答えると政宗は嬉しそうに言った。



確かに今日は端午の節句。
しかし、それがどうかしたのか美雨には全くわからず頭上にはポワンと疑問符が浮かんだ。




「ah?わかんねえのか?今日は端午の節句、つまり子供の日だぜ!?」
「そりゃあ、わかりますが…」






この城に子供なんて…





そう言い返すと、政宗は待ってましたと言わんばかりに、ニっと笑った。






「ってわけで、だ」






そう言うと政宗は美雨の膝を枕にして横になった。

予想外な政宗の行動に驚き、下に視線を落とすと、満足気な目と目がかち合った。






「意味が、わからないのですが」
「子供の日だっつったろ?」





確かに言いましたけども。





「政宗様は19でしょう?もう子供とは呼べるお年ではないはずです」
「けど、お前にとっちゃ子供だろ?」
「ひとつしか違わないんですが」
「ひとつも、だ」



固いこと言うなよ。


なんて口を尖らせ、不貞腐れるように政宗は言った。




「いつもは子供に見られるのを嫌がるではないですか」
「今日は別だ」




この人は一度決めると自分の意見を真っ直ぐに突き通す、そんな人だ。
これ以上、何を言っても聞こうとはしないだろう。
美雨はハーっとついた。





「しょうがないですね、今日は特別ですよ?」
「本当か!?」
「えぇ、本当です」




顔をくしゃくしゃにして政宗は笑った。
喜ぶ姿は本当に子供のようだ。



膝に乗せられた政宗の頭をゆっくりと撫でる。




「しかし政宗様、甘えてくるなんてなんだか珍しいですね」




その言葉に政宗は再び口を尖らせた。





「違げえ、普段は甘えたくてもできねえんだよ」
「はい?」




再び視線が重なる。




「普段、甘えようとしてもお前は何かしら理由づけて許さねえだろ?
だから今日ならってな」
「…貴方って人は…」




胸の奥が疼く。
呆れとか、イラつきとかそういうものではない。
だけど、この感情がなんなのかはわからない。






「普段も充分甘えていると思いますが?」
「あんなのは軽いほうだ」




そう言って政宗は、美雨を上に見ながら彼女の頬を撫でた。





軽いほう?
疑問に思いながら、また視線を落とした。すると、









ちゅ。






短いリップ音がしたかと思うと目の前には政宗の顔があった。



「な!!?」





今、今…!!?



一瞬、柔らかさを感じた頬に思わず触れる。

空いた口が塞がらないとは当にこのことだ。
まだ驚きで思考が停止している。
そんな自分の様を見て彼は笑って言った。






「今日は目一杯甘えさせてもらうぜ、Are you ok?」





END.

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