浅き夢見し恋せよ乙女

□その病の名は
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朝、ふとケータイを開くとメールが一件入っていた。

『From:かすが 
風邪をひいてしまったようだ。すまないが今日は休む』

短く返信を済ませるとケータイをしまって再び歩き出す。
どこかで誰かがくしゃみをする声が聞こえた。
風邪、流行ってんのかなぁ…






○●○●○


「Good morning 美雨」
「おはよ、政むっくしゅんっ」


やばい、本格的になってきたぞ(汗


「Ah?風邪でもひいたのか?」
「そーかも…」
「変だな、そりゃ…ナントカは風邪ひかねえって言うもんだが」
「遠まわしに馬鹿っていってんだろアホ宗」
「hum…自覚してるとは思わなかったぜ」
「土に還すぞアホ宗」


このやりとりは日課と化していた。
昇降口で一歩先に来ていた政宗と出くわし
それは始まるわけだが、下駄箱から靴を取りだそうとした瞬間に終わる。


ドササーードスッドスッ…


「「…」」


いいかげんに慣れたい…


政宗が下駄箱を開けた途端になだれ出てくるプレゼントやらラブレター。
ただでさえ多いのに日に日に増えてる気がするんですけど。

政宗本人は慣れているようで、冷静にそれらを拾うと、
きれいにゴミ箱へ収納した。


「待てぇぇぇ!!!おかしいだろ、それ!」
「Ah?」
「なに収納て!何きれいな表現でごまかしてんの!?」
「いらねーんだもんよ」
「…」


今日はゴミ箱ときた。
昨日は焼却炉だったから、まだ今日のがマシなんだけど。
いや 行きつく場所はどっちも一緒なんだけど、うん。



「何してんだ?」
「あ、ごめん」

きれいに収納されているプレゼント等に思わず見とれる。
本当にきれいなんですよ?
場所がものすごく間違っているだけで。


てか、あんだけモテといて喜ばないとかかっこよすぎだろ!
だから余計モテんだよ、君!!



当の本人は恋やら愛やら全く興味がなく、今日も部活の事で頭がいっぱいのようである。
ほら、今日も…


「だてむぁすぁむぬぇぇぇ!!」
「ha!きたな、さなだゆきむるぁぁぁ!!」


どこから取りだしたのか金属バット6本を持ち廊下へ飛び出していく。

「今日のぐらうんど使用権は、サッカー部がいただくでござるぁ!」
「ha!寝言は寝てから言うもんだぜ?玉っころがしなんざ河原でやってな!」
「その言葉、そっくりそのままお返しするでござる!」
「言うようになったじゃねえか、ん?真田幸村!!」
「伊達政宗ぇ!!」
「真田幸村ぁ!!」
「「うぉるあぁああ!!!」」



もはや日常、名物とまで言われるようになった野球部とサッカー部のグラウンド争奪戦。


「飽きないねぇ…」


窓は割れるし机は吹っ飛ぶし、時にはまきぞえくらった生徒も吹っ飛んでいく。
慣れとは恐ろしいもので、今では何の違和感もおぼえなくなってしまっている。


政宗もだけど真田くんもかっこいいよなぁ
あの容姿ならさぞかしモテるだろうに…。
きっと政宗と同じ部類なんだろうな、部活馬鹿っていう。

そういえば、真田くんといつも一緒にいる人がいたなぁ
争奪戦静めてんのもその人だっけ、確か。
…名前、なんだっけ…









○●○●○


『From:まつ
犬千代さまが風邪をわずらわせてしまいましたが故、今日は学校を休みまする』

〜♪
ピッ『あっ美雨だか?なんだか風邪こしらえちまったみてえでゲホゲホっ
おら今日は学校さいげね『いっつっきっちゃあああブチッツーツー…』

「…」


昼休み。気づけばメール、着信が一件ずつ入っていた。


「流行ってるなぁ、ほんと」


教室で一人ごはんってのも嫌だったから屋上へと向かう。
昼は政宗たちとは別行動なのだ。



「相変わらず人いないなぁー」


屋上は教室から離れた北校舎からしかこれないため、いつもがらんとしている。
柵によりかかり弁当をひらく。




「一人は、やっぱり嫌だな…」


口をもぐもぐ動かしながらつぶやいた。

こういう時、隣に…


「長政さま…市、早起きしてお弁当作ったの…食べて?…」


ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
美雨は柵から少し身を乗り出して下を見下ろした。


「そ、そうか…そこまで言うなら食べてやる」


言わずと知れた浅井・お市カップルである。
お弁当をひたすら食べる浅井先輩と
それを嬉しそうに見つめるお市。
なんとほほえましい…vv


浅井先輩って意外と優しいよなぁ…
市ちゃんの料理ってけっこうアレ(しいて言うなら愛しか詰まっていない)なハズなんだけど残さず食べるらしいし…
彼氏にするならあーゆう人だよねぇ
真面目で硬派っつうの?
「美雨ちゃん、覗きはよくないよ?」
「あーはい…って、はっ!?」


急に後ろから聞こえてきた声に無意識に反応するも、
一瞬にして元の世界に戻された。


み、見られてたっ(汗



「べ、別にみてたわけじゃっ、えとっ何ですか、急にっ」
「別に〜、美雨ちゃんがいんの見えたからきただけ」


相手は自分の混乱などお構いなしに飄々としゃべる。
風になびく山吹色の髪に、落ち着いた深緑のヘアバンド。


あれ?この人…



「真田くんといつも一緒にいる…」
「そ、俺様は猿飛佐助!知っててもらえるなんて嬉しいな♪」
「いや、知ろうとしなくても…」

毎日、嫌でも視界に入りますよ、
朝の乱闘で。


と続けようとしたがなんとなく止めた。


「あと、なんで名前…」
「竜の旦那とよくいるでしょ?会話によく名前がでてくるもんだから憶えちゃってさ」
「竜…政宗か」

私のいないとこで何話してんだアイツは。

「竜の旦那といるとけっこう大変でしょ?俺様も真田の旦那といると大変でさー」
「そ、そうなんだ…」
「同じ苦労人同士、助け合おうと思って♪大変なときとか、なんかしてほしいことあったらなんでも言って?」
「ありがとう…」



朝の様子とか見てるけど、なんていうの、お母さんぽいなぁ。
落ち着くっていうか、親近感が。
見た目は軽そうだけどけっこういい人…


「じゃあ、私にもなんでも言って!」
「ありがと、ではさっそく」
「うん、何?」
「俺様と付き合って☆」
「…は?」


前言撤回、こいつ最悪。













○●○●○



「ねぇ美雨ちゃーん」
「…」
「今度、遊びに行かない?」
「行かない」
「んじゃ、美雨ちゃんちに」
「こないで」

キーンコーンカーンコーン

「あ、授業始まるや。じゃあね、また」
「くるな」


佐助が教室から出ていくと美雨はハァーっと机につっ伏した。



「何があったんだ?厄介な奴に目ぇつけられちまったなぁ」
「政宗ぇ〜なんなのアイツは〜」
「あぁ、アイツは軟派で知られてんだよ」
「見るからにそーだけどさ〜…」
「気にいった奴にはとことんひっつくぞ、あれは」
「嘘〜…(泣」



政宗の言うとおり、アイツは急に現れてはひっついてきた。





「ジュース〜♪」ピッ、ガコン
「美雨ちゃん偶然ーvv」
「ぎゃおわっ!?」



「そうじ〜♪(モップがけ)」
「やっほ〜vv」
「ぎゃっ!??」バシャー…



「…(よし、いない!)」コソコソ
トントントン
「んー…なに…」
「美雨ちゃん帰ろ♪」
撃沈。








4日経過。



「…お前大丈夫か?」
「何が」
「負のオーラまとってるぞ(汗」
「まといたくもなりますよ」


今もなお佐助は美雨にひっついてきている。
いろんな工夫をしてみるも全て失敗に終わっているのだった。



「オレにゃどーしようもできねえしなあ…
あ、次、体育だぜ。着替えねーと」
「そーだね…体育で発散しますか」


政宗に励まされながらも美雨はやっと腰をあげたのだった。







○●○●○



「…というわけで、先生の都合により今日は1組と2組は合同で授業をすることになった」


う、嘘だああああ!!(大泣



まさかのタイミングで合同授業。
隣の組の列で見飽きた山吹色がこちらに手を振っていた。
あ、頭が痛い…



「oh…its crazy…まぁ種目は男女別だしよ…」
「ささやかなフォローありがと政宗」


そうだよ!男女別!!気にしない、気にしない!


「でも、なんかあったら助けてよ?」
「all right!まかせt」
「伊達政宗ぇぇぇ!今朝の勝負、ここで決着をつけるでござるぁ!!」
「ちょ、真田く」
「いいねぇ真田幸村ぁ!its show time!」
「「うらあぁああ!!」」
「ああああ…」


ふ、不安だ…
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