▼LS-short
□あなたのせい
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「はぁ……疲れた……」
私は小声で呟き、小さく伸びをした。
「何?もう疲れてしまったのか?」
「………っっ!!いえいえ、そんなことはないです!!」
「はっはっはっ。ではもう少し頼む!!」
赤ワインを一気に飲み干し、トリスタさんは上機嫌で笑う。
明かりに照らされた彼の頬も、心なしかほんのり赤く染まっているように見えた。
私は、そんな彼の広い背中と
グラスに映った彼の顔に見とれていた。
ここは帝国の城下町の路地裏の、小さな小さな酒場。
本当は父母が営んでいるもので
一人娘の私は、
普段は昼は通りでアルバイト
そして夜はここで手伝いをしている。
しかし今、父母は旅に出ていた。
私が成人を迎えたので、今までの感謝の意を込めて
彼らの故郷であるルリ島への里帰りを進めたのだ。
昼のアルバイトはその船代を貯めるためのものであった。
だから一月ほど、私がこの店を切り盛りすることになった。
今は夜遅く。
常連客である、騎士道まっしぐらのトリスタさんだけが店にいた。
そして今、日頃の労いを兼ねて
防具が重くて肩が凝ったと言うトリスタさんの肩を解しているのだった。
「なるほどなあ……名無しは本当に孝行な娘だ。」
「…そんなことはないですよ…当たり前のことです……」
「いやいや、謙遜することもないだろう!!」
「トリスタさん……」
「はっはっはっ!!名無しは本当に謙虚な女性だ!!」
彼はグラスを傾け、その液体を彼の体内へ一口分流し込んだ。