ネタ

□ムーミン3
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雲一つない青空の下、新緑が萌える野原でムーミン達は笑いながら遊んでいた。


「待て〜スニフ〜!」


「なんで僕だけ追いかけて来るんだよ!」


ムーミン、フローレン、ミイ、スニフは追いかけっこをしながら遊んでいた。
ミイが鬼で、逃げる人はムーミンもフローレンもいるのに何故かミイはスニフだけを集中的に追いかけていた。

そんな二人が面白くて、ムーミンとフローレンは逃げるのをやめて、それを見て笑っていた。

「も、もう僕、走れないよ……休憩にしよ……。」

散々ミイにしつこく追いかけられ、スニフが疲れたと根を上げた。

「なによ!だらしないわね!」

ミイはまだ体力が余っているらしく、まだ遊ぼうとスニフの尻尾を持って引っ張る。

「うふふ、スニフの言うとおりよ。そろそろ休憩しましょ。」

フローレンもムーミンも、おかしな二人を見て笑いすぎて疲れてしまった。フローレンがミイをスニフから引き離し、皆で一本の木の下で休むことにした。

木の下にはスナフキンが一人で空を見上げながら、ハーモニカで春を題材にした曲を吹いていた。

「はぁ、面白かった。」

ムーミンがスナフキンの隣に腰を降ろすと、スナフキンはハーモニカを吹くのをやめる。

「たくさん笑ってたね。」

「うん。スニフとミイが面白くてさ、」


ずっとハーモニカを吹いていたが、ムーミン達の笑い声がハーモニカよりも大きくスナフキンに聞こえていた。

どんなに面白かったか、ムーミンがスナフキンに楽しそうに話す中、スニフはもうウンザリだと腹ばいにグッタリと寝っころがる。



「そういえば、ムーミン。」



話している中、フローレンが話を変える。

「最近、○○の様子はどうなの?」

「あー……。」

ムーミンとムーミン家に居座っているミイ以外、他は○○のいた世界への帰り方を探した時以来ここ暫く目にしていなかった。

「え!?まだその人、ムーミン家にいるの!?」

スニフはギョッとした。
○○と初めて会った時、血塗れで暴れ出したのが相当トラウマだったらしく、○○の事を恐れていた。

「大分、怪我が良くなってきたよ。もう傷は全部なくなったけど、片目の腫れは少し残ってる。でも、もう動いたりする分には全然平気だって。」

「じゃあ、一緒に遊びに誘えば良いじゃない。」

「そうなんだけど……。」

ムーミンは毎日○○を遊びに誘おうとするが、○○はそれを断ってばかりだった。

あれから、○○がムーミン家に泊まる事になってから寝てばかりいた。

朝食を皆で食べた後は、また部屋に戻って二度寝し、目が覚めたらムーミンママの家事や畑の手伝いをし、また部屋に戻って寝る。
基本○○はご飯、おやつ、手伝い、トイレ、風呂の時以外は起きてこなかった。

「よっぽど眠たいのかしら?」

「ただ怠けてるだけよ。」

「でも、ママの手伝いをしているんでしょ?」

「んー。」


折角、○○がうちに居てくれるようになったのに、何も無いのはつまらなかった。

夜、今日あった面白かったこと、楽しかったこと、おかしかったことなどの出来事を話したかったのに、一緒にお話ししようと○○の部屋に入るのだが
、ごく稀にしか起きていない。


☆彡


「何か○○と一緒に楽しい事したいな……。」


ポツリと寂びしそうにムーミンが呟く。

「ボクはやだよ!そんな恐ろしい子と遊ぶなんて!」

「スニフうるさいわよ!」

○○と関わるなんて絶対反対だというスニフと叱るミイを放って、スナフキンは考えた。





「……じゃあ、こんなのはどうかな?」












「ありがとう、○○。とても助かったわ。」

「……いえ、大丈夫です。」

食器洗い、洗濯、掃除、花壇に植えてある花の手入れ、先程畑仕事が終わり、ムーミン家に帰ってきた。

今までそれらを全てムーミンママが一人でやってきたのだが、○○が来てから二人で行い早く仕事が終わるようになってムーミンママはとても喜んだ。

しかし、

「わたしの手伝いをしてくれるのはとてもありがたいけど、たまにはムーミン達と遊びに行って来ても良いのよ?」

折角うちに来たお客さんに仕事を手伝ってもらうのは気が引けるし、なにより、ムーミンと遊んだ方がムーミンも喜ぶんじゃないか。

ムーミンママはそんな事を考えた。

「……わたしももう18ですし、小さい子と遊ぶような歳じゃないですよ……それに、折角泊めて貰っておいて何もしないというのは図々しいですし……。」

「でもねぇ……。」

「手、洗ってきますね。」

そういって、○○は畑仕事で土を弄った手を洗いに行った。



「18て言っても、子供には変わらないのに……。」


片頬に手をあてて、やっぱりおかしな子ね、と考える。


「ママ!ただいま!」


スニフ以外、ムーミン達が家に帰ってきて、何やらそわそわと浮き足立ててムーミンママの方へ集まる。

「おかえりなさい、皆してどうかしたの?」

「うん、あのね……。」

ムーミンはキョロキョロと辺りを見渡し、確認すると口に両手を添えて耳を貸して、と小さな声で言った。

どんな内緒話かしらとムーミンママも耳を貸し、コソコソと話し始める。

「……まぁ!素敵ね。きっと、○○も喜ぶわ。」

「でしょ!」


子供達の素敵な提案に皆で小さく笑った。



「……どうしたの?」



「!?」


○○が手洗いから戻ってきて、ムーミン達はドッキリと肩が跳ね、心臓が鳴った。

「あ、○○……。」

「なんでもないわ!○○にはなんでもないの!」

フローレンが必至に二回も同じ事を言い、あまりの皆のキョドキョドとした態度に○○は頭にクエスチョンを浮かべた。



「ほんとになんでもないんだ、○○……。」



「……。」


改めてまたムーミンがフローレンと同じ事を言い、○○はムーミンの顔を見てから階段の手摺りに手をかけた。



「……邪魔してごめんなさい。」


「○○?」

重い足で沈んだように階段を上がっていく○○にムーミンは心配になった。

今のあまりの自分達の挙動不審さに蔑ろにされたと勘違いさせたのではないか、そう考えた。

スナフキンがムーミンの隣にきて肩に手を置いた。


「大丈夫さ。このことは内緒じゃなくちゃ意味がないのだから。」



○○を喜ばせたいなら尚更だよ。
ムーミンは親友の言葉に頷いた。







“…………ろ。……可哀想………だけど、”


“シッ!パパ、○○がいるわ……。”








“ほんとになんでもないんだ、○○……。”









(邪魔なら、そう言えばいいじゃん……。)

どうして私に隠し事をするの?

どうして私に怪訝な顔を向けるの?

どうして私を避けようとするの?



どうして

















(ムーミンはそんなつもりで言ったわけじゃないと思うけど、)





心臓に爪を立てられ、そのまま気持ちと共に潰されて真っ黒な底へと沈んでいく、

そんな気持ちになった。

ムーミン達に明らかな隠し事の態度をとられ、不安になった。

隠し事には良い隠し事と悪い隠し事があるのは知ってる。

だけど、

だけどだけど、










‘可哀想に’


‘○○可哀想に。’




どんな隠し事であれ、自分がいた世界でのことを想起させる。





‘可哀想’

‘可哀想’

‘可哀想’








( 煩い!! )






「…ゔぅ…んっく……ゔゔぅ……。」




その日、○○は一日中シーツを涙で濡らし、晩御飯になってムーミンママが呼びにドアをノックしにきても出てこなかった。








「キャハハ!起きて!お寝坊さん!」

ボスンッ!

「んぐ!?」

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