皇族の騎士

□覚醒の白騎士
1ページ/1ページ














「我らの要求を皇帝が飲まなければ、お前らの命はない!!いいな!」










銃を持ったテロリスト。
KMFまで用意されたその計画の周到さに前々から計画を立てていたものと思われる。
スザクはユーフェミアを自分の背に隠しながら、彼らを見つめた。
策もなしに突っ込むのは危険だ。
どうやって彼らの隙を作るのがいいだろうか。










「スザク……」
「大丈夫だよ、ユフィ。僕の後ろにいて」











人質は他にも多数。
きょろきょろと視線を漂わせていると、スザクの目にアッシュフォード学園生徒会の女性メンバーが映った。
ミレイ、カレン、シャーリー、ニーナ。
ニーナはガタガタと震え、ミレイが守るように抱きしめていた。
ここは大きなデパートだ。
それを考えれば、こうして誰かがいるのは絶対におかしいことじゃない。
でも、まさか。
















「偶然って、恐ろしいですね。殿下」






アスナが捕まっている人間のリストと、シュナイゼルの所へ送られてきた声明文を読む。
画像から判別する限り、ユフィは枢木スザクとともにここにいる。
問題は二つ、同時にできたということだ。






「ここで、枢木首相の息子をテロで、しかも我々が要求を飲まないことで死なせたら国際問題に発展する。
第一、国民を死なせれば皇帝への信頼はがた落ちだ。それにユーフェミア殿下のことだって……」
「しかしだからと言って、要求を飲めば国際的テロリストたちを解放してしまうことになる」






めんどくさいことになったな。
アスナは顔に隠すこともなくそれを浮かべた。
Clownのメンバーには緊急連絡と、配備を指示してある。
スイにも戦闘準備態勢を整えさせてあるが。
何分にも、今の状況では八方ふさがりだ。










「皇帝陛下は?」
「テロリストに屈する必要はない、たたき伏せろ…とね」
「なるほど、陛下らしいですね。
しかし……叩き伏せるにしても、人質が」
「そう、だから、君がいるんだろう?アスナ」









シュナイゼルは笑った。
その笑みにつられるようにアスナも笑う。
そして、跪くと














「イエス・ユアハイネス」




















「会長…!」
「スザク君!?」






皆が驚いた顔をする。
まさか、こんな所にいるなんて。
スザクはユーフェミアの手を引きながら、こちらに向かって歩いてくる。
といっても、屈んだままテロリストたちを刺激しないようにだが。





「怪我とか、ないですか」
「ん、それはへーき。無抵抗決め込んだら、攻撃はされなかったから」
「……よかった」





スザクはほっとした。
確かにニーナが相当恐怖心を持ち、震えているが、それ以外何か外傷があるようには見受けられない。
ユーフェミアも、そんな生徒会メンバーにほっと顔を綻ばせた。








(…もしかしたら、アスナが動いてくれているかもしれない…)









紅蓮の髪の姉のような騎士を思い出す。
彼女を困らせてばかりだが、今日ばかりは彼女を信じている。
都合がいいかもしれないけれど。


















(まったく、こんな隠密行動。久々すぎるだろう)






アスナはダクトを通りながら、ふぅとため息をついた。
KMF部隊の編成、スイに指示を預け、
アスナは騎士剣「ラグナロク」と共にこのビルに一人で潜入していた。
手元の端末で移動経路、予測時間、行動予定時間など確認する。
綿密に計算するテロリストほど、自分の予定が壊されると弱いものだ。





(ユフィ、無事でいてくれ…)





スイと同じく、妹だ、彼女だって。
従姉として、騎士として、彼女を守っていくのは自分の使命だ。
いつか、彼女に専任騎士ができるまでの間だけは。
















「まだ宰相府から、返答はないのか」






リーダー格の男が椅子に座ったまま、聞いた。
その様子はイライラしているのか、指で椅子の肘掛をトントンとたたいていた。






「もういい!見せしめに一人ずつ、殺せ!」






スザクがその異変を感じ取ったのは、見張りの男たちからだった。
見張りの男たちは、通信を受け取って頷いた。
そして、まるで品定めでもするように人質たちを眺めだしたのだ。
その空気の重さから、スザクはその状況を悟った。






「会長、しっかりニーナを」
「…え?」
「もしかしたら、彼ら……見せしめに人質を一人殺すかもしれません」






ええっと声を上げそうになったシャーリーの口元をスザクが抑える。
せっかく、声を抑えて話しているのに。
シャーリーはそれから悟ったのか、「ご、ごめん」と申し訳なさそうに項垂れた。
カレンがじっと見張りの男たちを見て、スザクへ視線を戻した。








「アイツら…たぶん、本気ね」
「あぁ、だから…」









スザクが動き出そうとした瞬間、男たちの腕がニーナをつかむ。












「お前、俺達について来い!」
「え……い、いやああああっ!!」
「ほら、黙ってついて来いっ!!」













ニーナが標的に。
それもそうかもしれない。
ニーナのあの震え具合を考えれば、テレビパフォーマンスとしては上出来となる。
こんな震える女子高校生を見捨てる皇帝陛下の図を簡単に作り出せるのだ。
スザクは「待て!」と腕を伸ばそうとするが、その前にユーフェミアが立ち上がった。














「お待ちなさい!
私はブリタニア帝国第3皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです!
私をあなた方のリーダーの元へ連れてゆきなさい!!」
















「…バーカ、ユフィ…………」











丁度人質が集められている部屋の上についていたアスナは、頭を抱えた。
バレてなかったから隠密活動やりやすかったのに。
こうなってしまっては。
この人質の部屋は、監視カメラを使って、全国へ放送している。
ユーフェミアの存在がばれたことは、本当に国を動揺させる。










(ともかく、ユフィの救出を…え?)










アスナの目に映ったのは生徒会メンバーだった。
しまった。
休日ぐらい、買い物に出かける人は多いだろう。
スイもそういえば、誘われたと言っていた。
仕事だからやめなさいと、止めたのは自分だ。
ぐっ、と唇をかみしめた。

ユーフェミアが部屋から消える。
すると、スザクが動き出した。








――――まさに一瞬だっただろう。








ユーフェミアを連れて出て行った見張りの分、こちらの見張りが減った。
そう思うと、すぐに行動に移していた。
全て、一撃で鮮やかにも見張り達を倒してしまったのだ。










「ふぅ……」










アスナはそれを見て、にっと笑う。
なら、ココは彼に任せようかな…?
モニターを見ていたシュナイゼルからもそういう指示が出ている。
ここで、日本に借りを作っておくのもまぁ、いいかもしれない。
それを口実に、色々話ができるかもしれないし。
アスナはシュナイゼルの意図をくみ取ると、早々に脱出の経路を取る。







「コムイ」
「はーい?」
「アラストル、シュムハザ、両機共に出撃準備、待機状態にしておけ」
「イエス・マイロード」








アスナは地図を確認し、モニターを見るとふっと笑った。














フー…とスザクは息を吐き出した。
全員、声を上げさせず一発で気絶させた。







「スザク君…」
「男性で、彼らを縛り上げておいてください。僕は…行かないと」







ユーフェミアを助けに。
彼女は命を懸けて、人質を守ろうとした。
だからこそ、自分を命を懸けて、彼女を助けなければ。
自分だって、彼女に救われたのだから。
スザクはその決意を固めて、ドアへと向かっていった。




スザクを決意を固めた時と同時刻、
ビルから10数km離れた上空。
Clown専用旗艦「メリリム」内には、Clownメンバーがその操作と、指示を待っていた。
そこへ、ブリッジのドアが開き、騎士服に身を包んだアスナが入ってきた。









「総督!ユーフェミア皇女殿下は!?」
「今は敵につかまっている…というより、人質を守るために、人質を買って出た、と言ったところか。
だが、ちょっとしたサプライズゲストが殿下の救出に向かっている」








アスナが指揮官座席に着くと、どこかブリタニア人とはかけ離れた外見の白い服の男が歩いてきた。
髪は首元と辺りで、巻かれ、上に跳ね上がっている。
どこか、インテリ毅然としたメガネをかけた男はコムイ・リー。
アスナをサポートする科学技術室室長にして、Clownのもう一人の副総督だ。











「アラストル、シュムハザ、どちらとも出撃準備整っているよ。アスナ君」
「あぁ、わかっている。
ともかくユーフェミア殿下の安全が確認されるまでは、出撃は出来ん」











――――君にかかってるぞ、枢木スザク。



















.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ