番外編

□青い光の君と。
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毎年のことながら、
まさか、高校に入ってまでこれをさせられるとは思わなかった。









「…なんで、学習しないかな」









俺は呆れてものも言いたくなくなった。
朝に電話が来て、
「今から、いくわ」って言われて、
ホントにその10分後くらいには家に来て。
なんで、来たのかなんて、中学時代からのことを考えれば、わかる。
宿題が終わってないのだ、要するに。
高校の宿題はまぁ、簡単に終わるようなものじゃないし、
桃井ちゃんも助けていたのだろうけれど、本人にやる気がないんじゃ意味がない。
それでも、やる気を出したのか俺を呼んだってところだろう。










「宿題くらい、夏休み始まってすぐに終わらせとけよ」
「オマエじゃねぇんだよ。オレは」









キリキリペンを動かせ、ペンを。
俺はベッドに横になりながら、下のローテーブルで紙に向かう大輝を眺める。
わからないところだけ教える。
つーか、わからないところだらけだからもう顔だけベッドから出してるって感じか。

大輝は「あー?」と言いながら、問題と向き合う。
何でこれもわからないかな?と思ってしまうこともあるが、
それこそ、大輝の言うとおりだ。
大輝は俺じゃない。
俺にわかることが大輝にもわかるとは思っていない。










(今日は別の用事もあったのになー)










もう一つの用事のほうが大事なのに。
まぁ、これも大輝絡みだけれど。
俺はベッドで寝返りを打った。
大輝が近いから、大輝のにおいがするなーとか、思いながら、
大輝が来てるからか、いつもよりも甘えたなマシロの頭を撫でる。


「おい」
「んー?」
「教える気、ねぇだろ」


大輝が仰向けになった俺を覗き込む。
「あ、ばれたー?」といえば、「テメッ…」と青筋が浮かんだ。
別に教える気がないわけではない。
だが、色々思うところもあるわけだ。
I・H予選で、コテンパンに負けて、色々言ってくれた奴だ。
それなりに考えてる。









「だってー、大輝も勉強するために俺んとこ来たわけじゃないだろ」









わかるんだ。
大輝の考えてることなんて。
桃ちゃんじゃぁ、ないけれど。
――――男って単純。
俺がふっと挑発的に笑うと、大輝が俺の唇にかみついてきた。









「いや、まぁ、宿題を終わらせたいってのは本音だって」
「桃ちゃんに文句言われるから、だろ?
俺は練習サボってるんだから、さっさと終わらせるぞ」








俺はベッドから起き上がって、
大輝の膝の上に座った。
暑いって、大輝が言わなかったから多分大丈夫だろう。
















――――夕日が差し込んできてるのに、気付いたのはそれからしばらくしてからだった。









「あ、」









俺が気付いたように起き上がる。
しまった。
まさか、膝の上で寝てしまっていたのか。
手元に見える宿題に視線をずらしてみれば、ちゃんと終わらせてあった。
そして、別の紙に「ごくろーさん」と書いてある。





(……俺が寝てても、できるんならちゃんとやってくれよ。マジで)






俺は呆れながらも、
なんだかんだ言って要領さえ教えてしまえば、
あとやる気になればやってくれる後輩をうかがう。
まぁ、やり方はちゃんと教えたしな。
多分…答えは見ないでやっただろう。
そんなことを考えながら、夕飯何作ろうかなと考える。










(……せっかくだしなー)










ケーキは、冷蔵庫だ。
あとは、何か数品作ろう。
それまで大輝には寝ててもらいたいが…
この熟睡具合からしてまだまだ起きないだろう。
振り返って、
俺は大輝の寝顔をうかがった。
やっぱり、寝顔だけはあのころの大輝と何一つ変わらない。












「Happy Birthday 大輝」












――――生まれてきてくれて、ありがとう。

キセキの世代に出会えたから。
大輝に出合うことができたから。













「俺はこうして生きていられるんだ」














唇に少し、触れて離れる。



「大好きだよ」



一言つぶやいて、俺は青峰の膝から離れて行った。


















――――反則、だろ。
アスナの足音が離れていくのを耳で確認して、目を開ける。
触れるだけ、とか。
女々しくも自分の唇に指を当てる。








「……っ、ゼッテー、後で襲ってやる」


















光に祝福を








(………大輝?起きたのか?)
(おー)
(抱き着かれると、ご飯作れない…)
(飯より、先にアスn…ゴハッ!!)
(言わせねぇよ)
(おま…っ、マジでみぞおち入ったぞ!?)
(入れたんだもん)
(もん…ってかわいいけどな、畜生)

(今日は大輝の好きなものだから)
(テリヤキバーガー?)
(んなわけねぇだろ)















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