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□感
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熱い


あれから思考が停止してどれ位時間が経ったのか。
自分でも計れない流れの中、それはすごく経ったのかもしれないし、ほんの一瞬だったのかもしれない。

感覚の麻痺は時間だけじゃない。
視覚はその瞬間から奪われたまま未だ暗闇の中だ。
思考や視覚が鈍っている分、他の感覚がやたらと冴えるのかもしれない。
聴覚はその規則正しい寝息と、耳に宛がわれている心臓の音に捕われたままだ。
嗅覚は私達を包むごく僅かな空間に満たされた彼の匂いに支配されている。

息もできない
とは、こんな時に使うんだな、と変な所で冷静な小さな自分が、私の体温と彼の体温で一杯になった私自身を見つめている。




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