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□感
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普段なら寝惚けまなこで目が覚める所、布団の中に私がいて混乱しているタイキに事情を説明すると、やっと得心したのか、すぐに落ち着いていつものタイキに戻っていった。

「ごめん、ホントーにごめん!」
「いいよもう。それにあたしも……〜〜〜〜」
「?」
「そ、それより今日はコレ、渡しに来ただけだから」

本来の目的を果たそうと持って来た紙製の手提げ袋を差し出したが、今までずっと抱えられていた為、折り目がややひしゃげていた。

「あちゃあ…中身大丈夫かな…」
「紙って結構頑丈だし、大丈夫じゃないか」

開けてもいいか、と尋ねてきたので私は「うん」と答えた。
見た所、タイキの言う通りひしゃげていたのは外側だけで、中に入っていた小箱は無事なようだった。
リボンを外し包装を解くと箱の中から甘い匂いが漂う。

「……チョコ?」
「ちょっと早めのバレンタインチョコ……のはずだったんだけど……」


昨日、一際気合いを入れて作ったハート型のチョコ。
それは何故か無残に溶けていて、とてもハートとは言えない形になっていた。

「…………あ!ずっと抱えていたから溶けちゃったんだ!」

思い当たるといえば、ついさっきの出来事。
思い返した事で、それによって形成された証拠を突きつけられた気分になり、また少し恥ずかしくなった。

私は箱の中からチョコを1つ取ると自分の口に放りこんだ。
溶けかけのチョコが指にベタリと残り、残りの甘い塊は口の中に消えていった。

「うわぁドロッドロだね。結構自信作だったんだけど、こう溶けちゃ食べにくいし……そうだ!また今度作ってくるから、コレあたしが持って帰――――」




帰るね、と言いたかった。

言えなかったのは

タイキが私の指を取り、付いたチョコを指ごと自分の口に持っていったから。

その動きはスローモーションの様になめらかで、私が我に返ったのは、指がタイキの口に含まれた後だった。

何してんの!?
と言いたかった私の口は情けなく空を切るだけで、声にすらならなかった。

意識が感覚をシャットアウトしていく。
直接的な熱は指先のチョコをねぶり取り終わると、その拘束を解いた。




「うん、美味い。もったいないから俺食べるよ」

冷蔵庫で冷やしてくる、と言い残してタイキは部屋を出ていった。
何もなかったように

何も……なかった?


「そんなわけ……ないじゃない……」

力が抜けた私はその場に座り込んだ。

しばらくはきっと立てそうもない。

残されたこの熱が覚めるまでは――――




END



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