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□熱
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校舎に三時間目の開始を告げるチャイムが響く。
ついさっきまで校庭や廊下で騒いでいた生徒達のざわめきが静かになる中、保健室のドアが一人の女性によって開けられた。
「ハデス先生すみませんが、消毒液と包帯を貸していただけますか」
入ってきたジャージ姿の女性は、少しバツが悪そうに中の住人に告げた。
怪我をしたのか、左手で押さえている右肘の辺りが血で赤く滲んでいる。
「才崎先生!どうしたんですか、その怪我!ああ、とにかくここに座って下さい。すぐ手当てしますから」
「いえ、授業中にちょっと。大した傷ではありませんので、消毒液と包帯さえあれば自分で処置しますから」
「大した傷じゃないって……だめですよ!きちんと手当てしないと破傷風になるかもしれない。それに……」
呆れる程心配性な保健室の住人がいた時点で、こうなる予想はついていた。
だが、あまりの慌てぶりに、みのりは苛立ちを通り越してため息が出てしまう。
「ハァ……わかりました。お任せしますわ」