Digimon.
□甘酸っぱい物語
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「あ゛〜〜っやっと授業終わった!」
『なに太一、間の抜けた声だしちゃって』
「だってさー今日小テストあったしめっちゃ疲れたんだよ」
『これから部活なのに疲れたなんて言ってらんないじゃない』
「うっさいなー絵里は。まぁ俺今日部活休むけどね」
『え、そうなの?珍しいね』
「まーなっそんじゃ帰るわ!」
『あ、うん、また明日…』
太一は軽く手を振ってから教室を出てった。
あの熱血サッカー青年が休むなんて本当に珍しい……。
なにかあるのかな…?
私は頭の片隅で少し気にしつつ、帰る支度をした。
(今日バイトもないし、暇だから帰りに雑貨屋さん寄ってこうかな)
――――――――――…‥
『あ〜このシャーペン使いやすいやつだ』
(買おうかなーでもお金がなー)
そんなことを考えていたら、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「あははっこれ良いじゃん!」
「えーっ変だって〜」
なんか聞き覚えのある声。
ドキ、としながら声主を見ると先には私が予想していた人物がいた。
(太一が女の子と……?その為に大好きなサッカー休んだの?)
なんか、とても複雑。
隣にいる女の子はとても可愛い。
茶髪で清純ぽい女の子。
お友達……?
だったら、いいな。
「あれ、絵里?」
『あっ……』
立ち尽くしていたら太一と不意に目が合ってしまった。
「なんか買い物しに来たの?」
『えっ、うん……太一こそ……』
(サッカーサボって女の子と遊んじゃって)
そう喉まで来たものを飲み込んだ。
「ん?なに?」
『べ、つに…』
こんな嫉妬、やだな。
「あれ?お兄ちゃんの知り合い?」
ひょこっと現れたのはさっきまで太一と一緒にいた女の子。
『え、お、お兄ちゃん…?』
私がドギマギしながら言うと、太一が説明した。
「ああ、俺の妹のヒカリ。こいつの買い物に付き合わされてさ」
『そっそうだったんだ……』
よかったあ、と心の中で大きく安心する。
「ヒカリ、もう買い物終わったし早く行ってこいよ」
「うん…!行ってくるね!」
私に軽くお辞儀をしてヒカリちゃんは走って行った。
『どうしたの?』
「あいつさ、彼氏のプレゼントどれにするか悩んでてそれにアドバイスしてたんだ」
『妹想いなんだねー』
「絵里は何か買ったの?」
『ううん、見てただけ』
「あのさ、俺びっくりしたんだよね」
『なにが?』
私が頭にはてなマークを浮かべると太一が視線を逸らした。
「いや、絵里のこと考えてたら本当に絵里いて……なんかびっくりした、マジで」
『え……?』
言ってる意味がわからなくて太一の顔を覗き込むと、太一はバッと顔を隠した。
「あーー俺の顔見るな!絶対真っ赤だから!!」
『たいち?』
「本当鈍感っ!絵里が好きなの!」
『え、うそ……?』
「嘘なわけないだろ…」
『だって両思いだなんて……嬉しくて…』
「絵里……」
お互いに真っ赤な顔になる。
心臓がかゆくなる感覚。
「俺と、付き合って……?」
『はい……!』
甘酸っぱい物語。
(真っ赤なのは夕日のせい。)
(言い訳にしたいくらい、恥ずかしいんだもん)