Digimon.

盗み聞きから、
1ページ/1ページ





「あの、タケル君のことが好きです!
私と付き合ってください」






――――なんという状況。




先生に頼ま事があり、職員室に向かおうとした時、運悪く告白現場を目撃してしまった。




私はそっと2人から見えないところに隠れた。




「ありがとう、気持ちは嬉しいけど僕には好きな子がいるんだ。
ごめんね…」



「い、いえっ!すみませんでした……」



その女子は目に涙が溜まりながら、すぐにその場を去った。






『律儀な謝り方ー……』



なんて感心しながらもタケル君が発した、


"好きな子"


その言葉が気になって仕方がない。






(好きな人、いるんだ…)


やっぱり好きな人の好きな人なんて、知りたくないな。

少し俯き加減になり涙を堪えながら、その場を去ろうとした。






「そんなところで何やってるのかな?趣味なの?」



『うわあっ!!』



背後から低い声が聞こえて、びくりと肩が上がった。



「そんなに驚かなくてもいいじゃないか」



『えっと…、ご、ごめんね』



「いや…、さっきの話し全部聞いてたの?」



『えっ……うん…。
でもたまたま通りかかっただけで、聞くつもりはなかったの!』




そう言うとタケル君は私から視線を逸らした。


彼の顔が赤くなっていくのを見て、本当に好きな人がいるんだ、と実感が湧いた。






「えっ絵里ちゃん!?どうしたの!?」



『えっ…?』




一瞬言ってる意味がわからなかった。
だけど、自分の顔が濡れているのに気づいた。



私、泣いちゃったんだ…。





「だ、大丈夫…?」



『うん、…ごめん、ね』



「………絵里ちゃん、今から話すこと聞いて?」





嫌だ。そんなの予想がつくから。

何も聞きたくない。
涙は止まることを知らずに、次々と溢れてくる。





『ごめ…ん、タケル、くん…私…無理……っ』




「……ぼっ僕の好きな子は、絵里ちゃんだよ!!」



『……えっ』





ぼやけてた視界を指で拭うと、タケル君の顔がくっきりと見えてきた。




「絵里ちゃんが、好きだよ」


『嘘……』



「本当だよ、ずっと前から絵里ちゃんが好きだったんだ」



気づけばタケル君は私を抱き締めていた。




『私も、タケル君が好き……』



応えるかのように私はタケル君の肩に腕を回す。


ここから愛が始まっていく…。






盗み聞きから、
(偶然の出来事だけど必然的でもあってほしい)








 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ