チョコラテLOVE
□約束だよっ!
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「俺が騎士団で何て呼ばれてるか知ってる?」
「え? マダムキラー?」
「何でだよ? マスコットだよ。マスコット」
口をへの字にしてるけどあひる口とかしてくれないかなあ。してくれたらあたしの脳内アルバムに焼き付けるのに。
今日のルイスは本当にご機嫌斜め。
せっかく男の子たちの憧れ、騎士になれたっていうのに。マスコットくらいいいじゃん。
それより騎士になるちょっと前から一人称が「僕」から「俺」に変わったのが超さみしい。いや、それはいいんだけどさ。
ともかくルイスは騎士団で一番背が低くて可愛い騎士だ。
さぞかし先輩方にいじられていることだろう。ルイスをいじるのはあたしの専売特許なのにさあ。
ちぇっ。
今日はルイスが騎士になれてから初めてのデートだっていうのに。
まあ、デートだってあたしが決め付けてるだけだけど。
騎士になってからというものルイスは忙しくてなかなかデートしてくれなかった。
家が近いから顔を合わせることは多々あれど2、3分軽く立ち話程度ばかりだった。最近ずっと。
ルイス切れで死んじゃうよ。干からびちゃうよ。
で、やっと会えたと思ったのに。
この微妙な空気。
家族で散歩してる人とか、犬と一緒に走ってる人とか、腕とか組んでラブラブなカップルとかもいるのに。この陽気とは裏腹にルイスの表情は曇ったまま。
騎士になってから昨日までの話をたくさん聞かせてもらおうと思ってたのになあ。騎士になれて最初の仕事が(騎士とは名ばかりの)老人と二人だけでずーっと書類の整理整頓とあってはくさるのも分かるんだけど。
同じく騎士になった新人さんたちはもう訓練に参加してるから余計そう思うのだろう。
よし! ここは一つあたしがルイスを元気づけてやろう!!
「ルーイス! あのさ!」
「そういや、セシェンのほうはどうなの? 学校のほうは?」
「えーっと・・・まあ、普通」
出鼻をくじかれて返事がおざなりになってしまった。
新生活が始まったばかりのピカピカのルイスとは違って上級学校に通うあたしは学年が上に上がっただけ。
クラスメイトが変わったといえば変わったんだけどメンバーも結構被っていて新鮮味もイマイチ。
ルイスがじーっと興味深そうに話を聞きたそうにしているけれど残念ながらこれといって面白い話はない。
「そんなに見つめるとチューしちゃうよ」
にぃっと笑うと、ルイスは顔を赤くして口を手で覆い、ぱっと顔を背けた。
そんなところも好きなんだけど・・・今のは拒絶されたってことなんだろうか。
「ルイス。難関を突破して騎士になれたんだからそんな暗い顔してちゃ駄目だよ! さあ! あたしの愛情たっぷり詰まった愛妻弁当を食べよう!!」
あたしはルイスの手を引いて花が満開になっている公園に向かって走り出した。
「愛妻って・・・」
と、突っ込みの声が聞こえたけど無視した。
公園で一緒にお弁当を食べてから、お買い物したり新しく出来たお店を覗いてみたり久々に楽しい時間を過ごせた。
だけど家に帰ってから気づいた。
・・・・今日も「好き」って言ってもらえなかったなあ。
あたしの気持ち、容赦ないくらいバッチリ伝わってるはずなのにおかしいなあ。
「はう。昨日も言ってもらえなかったよ」
「あっそ」