紅色の大空

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全てはあの日にはじまった。





あの日、俺はいつもと同じように獄寺君と山本の三人で登校していた。
他愛ない話で盛り上がり、山本に突っかかる獄寺君を宥めながら歩く。
学校に着く直前、山本が思い出したように、
「なぁなぁツナ、獄寺!今日転校生来るって知ってたか?」
と俺と獄寺君に言った。
「転校生?」
転校生かー。
そういえば獄寺君も転校生だったな。
そう思って獄寺君を見るが、当の本人は全く興味がないようで、あらぬ方向に目をやっている。
「あんまり関わらないようにしたいなー。」
「ん?なんでだ?」
「ほら俺ってダメツナだし…。」
俺が苦笑すると、山本はにこにこといつもと同じ笑顔で俺の肩を叩いた。
「んなことねぇって!ツナなら絶対仲良くなれるのなー。」
「そ、そうかな?」
「そうですよ十代目!」
この時は、転校生と仲良くなれたらいいね、で話は終わった。
時期外れの転校生――――俺はこのあと、超直感が告げる小さな違和感を無視したことを後悔することになる―――――





転校生として紹介されたのは、髪を淡いピンク色に染めたギャルのような女の子だった。
「古荻華奈っていいまぁすVよろしくねぇVv」
特徴的な話し方の子だな…そんなことを思っていると、華奈ちゃんと目があった。
ゾクッ―――
突然言い様のない寒気を感じ、俺は華奈ちゃんから目を逸らした。

危険だ

関わるな

頭のなかに警鐘が鳴り響く。

危険危険危険キケンキケンキケンきけんきけんきけんきけんキケン危険

言葉が頭のなかでガンガンとこだまする。


「綱吉くぅん、よろしくねぇV」


そんな言葉が聞こえると同時に、俺の頭は真っ赤に染まった。










気がつくと、俺は床に座り込み、いろんな人に覗き込まれていた。
「十代目!!?大丈夫ですか?!」
やっぱりというかなんというか、俺に駆けよってきたのは獄寺君だった。
「うん…たぶん大丈夫。」獄寺君の手を借り、ゆっくりと立ち上がる。
「綱吉くん大丈夫ぅ?」
むせかえるような香水の匂いに俺はうっ、と息をつまらせた。
見ると、獄寺君の後ろに、俺を覗き込むように華奈ちゃんが立っていた。
さっきのことを思いだし、一瞬身構えたが、あの寒気から警告までのことは嘘であるかのように何も起こらない。
「う、うん…大丈夫だよ…。」
不思議に思いつつも、とりあえずそう返した。
「そっかぁよかったぁV」華奈ちゃんはホッと安堵したように笑った。

………?

何かがおかしい……
他の人は何も感じないのだろうか……?

華奈ちゃんの笑顔は―――
どこか嘘臭いというのに…




その後、何事もなかったかのように、授業が始まり、終わり、昼休みになり、放課後になった。
華菜ちゃんの席は、俺の隣になったけど、あの感覚が蘇ることはなかった。
華菜ちゃんの笑顔は、やっぱり嘘臭い気もしたけど、俺以外誰も気にしてないみたいだったから俺も気にしないよう努めた。
だから、華菜ちゃんが転校してきてから約1ヶ月、とくに何もなく、平和に過ぎていった。

そして、1ヶ月と19日が過ぎた今日、


全てが変わった。

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