歪んだ愛に溺れて

□最果て
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「今日……静雄に会いに行ってくる」

カチリとフォークと皿が当たる音がして、臨也がフレンチトーストを食べる手を止めた。

「一人で大丈夫……?」

「え?」

目玉焼きの黄身をつつきながら、臨也は言いにくそうに視線を落とした。

「ほら、今までだって諦めなかった奴が何人かいたし……。それにシズちゃんがストーカーにでもなったら厄介だよ?」

「なに、別れてほしくないの?」

「別れてほしいけど……」

つまり、臨也は静雄が私のことを諦めなかった場合、私に何をするか解らないと言いたいのだろう。

「臨也、静雄は今までの男とは違うよ。……最後まで普通に付き合っただけだった」

だから何年も一緒に居られたのだと思う。力だけでなく、精神的にも静雄は強かった。
臨也には悪いけど、私にも静雄を好きな気持ちがちゃんとあったのだ。新羅と同様、珍しい人間だからかもしれないけど。
できればこれからも、世間一般で言う友人というものでありたい。

「……だから、心配しないで」

臨也はどこか腑に落ちないといった表情をしているが、小さな声でうんと言った。
琥珀色をした紅茶の水面を見つめ、静雄にはどう言おうかと考える。誰だって、何年も付き合っていた人に理由もなく別れようと言われても、そう簡単には納得できないだろう。

「昔は簡単にフってたのになあ……」

「良かったら、俺がついて行ってあげようか?」

心なしか楽しそうな臨也を見つめ、溜息をつく。

「どうせ、フラれた静雄を見て笑うつもりでしょ?事態がややこしくなるから却下」

「なんだ、残念」

臨也は肩をすくめ、再び食事を再開した。

いざ顔を会わせてみないと何を言えばいいか解らない。
その時に考えるか、と結論付け、フレンチトーストにフォークを突き立てた。


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