歪んだ愛に溺れて
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床に落としていたジーンズを拾い上げると、その下に調査書が見えた。
隣で寝てしまった名前と紙を交互に眺めて、手を延ばして部屋の中央にあるテーブルに置いた。
上がりきった体温を下げようとクーラーの設定温度を少し下げ、再び名前の隣に潜り込む。
――進路、ねえ……。
表向きは進学するつもりだが、本格的に情報屋を始めるからあまり大学に行くことはないだろう。その為にはこの家を出て、マンションを借りることも考えている。
名前はどうするのだろう。
名前の頭ならどんな大学だって行ける。しかし、その大学がどこにあるかが問題だ。
せっかくこうして恋人となれたのに、離れてしまうなんて耐えられない。最低でも都内にしてほしい。
できることなら、いっそ二人で暮らしたい。
顔にかかっている長い髪を耳にかけ、静かな寝息をたてている名前を見つめる。夏だというのに透き通るように白いその肌には、うっすらと汗が浮かんでいた。
視線を下にずらすと、鎖骨の少し下にある赤い印が目に入った。
これは俺がつけたものじゃない。
服を脱がせた時に発見したのだが、本人は気づいている筈だが何も言わなかった。
――シズちゃん……ね……。
進路よりもその前に、アイツをどうにかしなければいけない。俺の気を引くために付き合ってるのなら、もう別れてもいいのに。
「あんな単細胞のどこがいいんだか……」
「そこが静雄のいいとこだよ」
突如名前の目が開いて、吃驚して心臓が跳ねあがった。
「ちょっと、驚かさないでよ。いつから起きてたの?」
「臨也が入ってきたあたりから。私に見惚れてた?」
ニヤリと意地悪く笑う名前の額にデコピンする。
「解ってるなら言うな」
「自分だって同じような顔してるくせに」
名前は腕を延ばして背伸びをし、服取ってとバシバシと肩を叩いてきた。大人しく従い、寝転んだまま名前が服を着る姿をぼーっと眺める。すると、名前がこっちを見て頬をつついてきた。
「安心しなよ。私は来良大行くつもりだから」
「……名前は読心術でもできるの?」
まさかと言って、名前はTシャツから頭を出した。
「臨也の考えてることなんてお見通し」
「……解った、降参だ」
やっぱり俺は、名前には勝てない。
自嘲気味に笑い、名前の髪に指を通した。
「じゃあ、俺も来良大に行こうかな」
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