歪んだ愛に溺れて
□白い薔薇を赤に
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「はい、おやすみー」
「……おやすみ」
最近では私の部屋で寝るのが当たり前になっていた臨也が、電気を消して布団に潜り込んできた。抱き枕みたいに抱き締められて、背中をぽんぽんと叩かれる。
「ねえ」
「ん?」
「今日の昼休み、臨也の彼女っていう子に声かけられた」
「……あー、茶髪の?」
「うん」
思い出したらまた黒い感情が生まれてきて、ギュッと臨也のシャツを握った。
「臨也、彼女に何吹き込んでるの?あの子、臨也と結婚できると思ってるみたいなんだけど」
「別に俺は何も言ってないよ。それに、名前だって何回も騙してきたじゃないか」
まあ、否定はできない。私と結婚できると思ってた男は何人もいた。
似た者同士というわけか……。
「流石双子。することは同じなんだね」
「俺は名前に似ただけだよ」
「普通逆でしょ」
顔を見合わせて笑うと、胸の中で渦巻いていた物が消えていくような気がした。
だんだんと薬が効いてきたのも理由の一つだろうけど。
臨也もそれに気づいたのか、止めていた手で再び背中を叩き始めた。一定のリズムが伝わってきて、更に眠気が襲う。
「名前」
心地好い微睡みの中、臨也が不意に私の名前を呼んだ。
「なに……?」
「俺は結婚なんて誰ともするつもりはないよ」
「……そう」
答えた直後、目蓋が落ちた。
「名前以外とはね……」
それは夢だったのか、現実だったのか。
臨也のその言葉が、頭の中に響いた。
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