歪んだ愛に溺れて
□ガラスケースのヒビ
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さっきもそうだったけど、時々、ふと俺と名前が兄妹じゃなかったら、なんて考えてしまう。
誰にも非難されることも反対されることもなく、好きになって告白して付き合って。
朝は名前を迎えに行って、帰りは家まで送る。たまに一緒に遊びに行って、テストの時は一緒に勉強する。
べつに特別なことなんか望んでいない。
誰でもしているような普通のことをしてみたいだけなのだ。
それなのに、兄妹だから許されない。
解っているけど、つい想像してしまう。
後に残るのは虚無感だけなのに……。
深く息を吐き、自嘲気味に笑った。
「馬鹿みたいだ……」
小さな呟きは、埃っぽい階段に静かに響いた。
♂♀
窓から射し込む夕日で橙色に染まった廊下を歩く。
今日は俺と名前が日直で、名前が黒板を掃除している間に俺が日誌を届けに行った。
教室には誰もいなくて、外から聞こえてくる運動部の声と俺の足音だけが廊下に響いていた。
――帰りに名前とどっか行こうかな……。
そんなことを考えながら、教室を目指した。
ふと、人の話し声が教室の中から聞こえてきた。
小さくて内容はわからなかったが、誰の声だかは解った。
――シズちゃん……。
足音をたてないように教室の後ろのドアまで行き、そっと覗きこんだ。
案の定、窓際の名前の席で、名前とシズちゃんが話していた。
入ろうにも入れないし、荷物はまだ教室の中。
どうしようかと迷っていると、信じられない言葉が耳に飛び込んできた。
「名前……お前が好きだ……」
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