夜に綴る物語

□女の武器は美貌なり!
1ページ/2ページ



穏やかな陽光が射し込む真選組屯所内の一室。
近藤さんと土方さんの前に呼び出され、新たな任務が発表された。

「真選組副長補佐名字 名前に、吉原での潜入捜査を命ずる!」

「……ええェェェエ!?」

予想もしていなかった任務の内容に、身を乗り出して抗議をする。

「ちょっと待ってください!は?吉原?本気ですか!?」

「本気も本気。ガチだ」

無駄にキリッとした表情で、近藤さんが頷く。

「近藤さん、無理して若者っぽい言葉使うのはよしてくだせィ」

「いやいやいや!話そらさないでくださいよ!」

真撰組の屯所に、私の声が響き渡る。
私は思わず立ち上がり、近藤さんの胸ぐらを掴んで持ち上げブラブラと振った。

「ちょっ!名前くん待ってっ!許してください許してくださいっ!」

「答えてくださいよ局長。どうして吉原なんですか!?」

「だから下ろしてぇぇぇえっ!」

話が進みそうにないので、取り敢えず近藤さんを下ろす。土方さんが、煙草の煙をはきながら、やれやれと溜息をついた。

「大丈夫かよ、近藤さん」

「ゲホッグハッゴホッ!!」

「やだ、ゴリラが咳こんでる」

「名前も、俺に劣らずSですねィ」

「ありがとう」

「おいおいドSコンビ、ちっとは心配しろよ」

「大丈夫ですよ土方さん。これくらいで死ぬようなゴリ……人じゃありませんよ」

「あ、今ゴリラって言おうとしやしたね?」

「あれ、バレちゃった?総悟は観察力がいいわねー」

「名前ほどじゃありませんゼ」

「おいそこ!!二人で和むなやっ!!」

土方さんに怒られ、渋々元の場所に座りなおした。
そして、冒頭に戻る。

「で、どうして吉原なんですか?」

「それがだなぁ……」

先程とは違い、近藤さんは真剣な面持ちで話した。

「攘夷浪士の過激派が、吉原で裏取引をしているらしいんだ。しかし証拠が出ていないため、逮捕までこぎつけられない。そこで、名前くんに探ってきてもらいたい。君にとっては簡単だろう?」

「まぁそうですけど……それは斬ってもいいんですか?」

また始まったよ、と土方さんが呟くのが聞こえた。

「またそれですかィ、名前。この前も散々滅茶苦茶にしてくれたでしょう。またやらかす気ですかィ?」

「だって最近暇だったし……。銀さんに付き合って甘いものばかり食べてたから、ちょっと運動したいの!」

「……近藤さん、今の名前には何を言ってもムダでさァ」

「毎回建物ぶっ壊すあんたにだけは言われたくないわよ!」

「あれ、そうですかィ?俺の場合は不慮の事故でさァ」

「どこが!?」

総悟とやいやい言い合っていると、土方さんが間に入ってきた。

「はいはい、総悟も名前も落ち着け。どっちもどっちだ」

「「うるせぇマヨラー!!」」

「なんでそこで息が合うんだよ!!」

総悟と向き合ってガン飛ばし合う。

「ふんっ!総悟なんてもう知らない!」

「あーあ、土方さんの所為で名前が拗ねた」

「お前が原因だろ!?」

青筋をたてて威嚇する土方さんと、飄々としている総悟を横目に、私は近藤さんへ向きなおった。

「分かりました。明日から行ってきます」

「おお、そうか。では頼んだぞ!」

「「は!?」」

土方さんと総悟の声が、見事にハモった。

「今までのくだりはなんだったんだよぉぉぉぉぉおっ!!」

その時の土方さんの叫び声は、屯所の外まで聞こえたという。

,
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ