夜に綴る物語
□女の武器は美貌なり!
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穏やかな陽光が射し込む真選組屯所内の一室。
近藤さんと土方さんの前に呼び出され、新たな任務が発表された。
「真選組副長補佐名字 名前に、吉原での潜入捜査を命ずる!」
「……ええェェェエ!?」
予想もしていなかった任務の内容に、身を乗り出して抗議をする。
「ちょっと待ってください!は?吉原?本気ですか!?」
「本気も本気。ガチだ」
無駄にキリッとした表情で、近藤さんが頷く。
「近藤さん、無理して若者っぽい言葉使うのはよしてくだせィ」
「いやいやいや!話そらさないでくださいよ!」
真撰組の屯所に、私の声が響き渡る。
私は思わず立ち上がり、近藤さんの胸ぐらを掴んで持ち上げブラブラと振った。
「ちょっ!名前くん待ってっ!許してください許してくださいっ!」
「答えてくださいよ局長。どうして吉原なんですか!?」
「だから下ろしてぇぇぇえっ!」
話が進みそうにないので、取り敢えず近藤さんを下ろす。土方さんが、煙草の煙をはきながら、やれやれと溜息をついた。
「大丈夫かよ、近藤さん」
「ゲホッグハッゴホッ!!」
「やだ、ゴリラが咳こんでる」
「名前も、俺に劣らずSですねィ」
「ありがとう」
「おいおいドSコンビ、ちっとは心配しろよ」
「大丈夫ですよ土方さん。これくらいで死ぬようなゴリ……人じゃありませんよ」
「あ、今ゴリラって言おうとしやしたね?」
「あれ、バレちゃった?総悟は観察力がいいわねー」
「名前ほどじゃありませんゼ」
「おいそこ!!二人で和むなやっ!!」
土方さんに怒られ、渋々元の場所に座りなおした。
そして、冒頭に戻る。
「で、どうして吉原なんですか?」
「それがだなぁ……」
先程とは違い、近藤さんは真剣な面持ちで話した。
「攘夷浪士の過激派が、吉原で裏取引をしているらしいんだ。しかし証拠が出ていないため、逮捕までこぎつけられない。そこで、名前くんに探ってきてもらいたい。君にとっては簡単だろう?」
「まぁそうですけど……それは斬ってもいいんですか?」
また始まったよ、と土方さんが呟くのが聞こえた。
「またそれですかィ、名前。この前も散々滅茶苦茶にしてくれたでしょう。またやらかす気ですかィ?」
「だって最近暇だったし……。銀さんに付き合って甘いものばかり食べてたから、ちょっと運動したいの!」
「……近藤さん、今の名前には何を言ってもムダでさァ」
「毎回建物ぶっ壊すあんたにだけは言われたくないわよ!」
「あれ、そうですかィ?俺の場合は不慮の事故でさァ」
「どこが!?」
総悟とやいやい言い合っていると、土方さんが間に入ってきた。
「はいはい、総悟も名前も落ち着け。どっちもどっちだ」
「「うるせぇマヨラー!!」」
「なんでそこで息が合うんだよ!!」
総悟と向き合ってガン飛ばし合う。
「ふんっ!総悟なんてもう知らない!」
「あーあ、土方さんの所為で名前が拗ねた」
「お前が原因だろ!?」
青筋をたてて威嚇する土方さんと、飄々としている総悟を横目に、私は近藤さんへ向きなおった。
「分かりました。明日から行ってきます」
「おお、そうか。では頼んだぞ!」
「「は!?」」
土方さんと総悟の声が、見事にハモった。
「今までのくだりはなんだったんだよぉぉぉぉぉおっ!!」
その時の土方さんの叫び声は、屯所の外まで聞こえたという。
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