夜に綴る物語
□03
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それからも、名前の総悟に対する過保護な態度は日々拍車をかけて続いた。しかし、周りから見ると微笑ましい光景だが、総悟本人からすると迷惑でしかない。
「沖田君、これ新発売のポッキー!ほら、食べさせてやろう!」
「いらねェ。つか、上から目線で来んな」
「まあまあ、そんな怖い顔しないで。折角のかわいさが台無しですよ」
「かわいくねェ」
プイッと顔を背ける総悟に、名前が頬を緩ませる。
「何、このかわいい生き物!土方さん!見えます!?」
「それのどこがかわいいんだ。つーか、見てて暑苦しいから離れろ」
書類を書く手を止め、土方が呆れたように二人を見る。
名前は懲りることなく総悟にポッキーを食べさせようと苦戦し、総悟は総悟で名前から逃れようと苦戦している。何があっても余裕の表情を崩さない総悟がここまで必死になっているのは珍しいことだ。
ムキになる姿も子供の頃のようで、そんな総悟を見て近藤は微笑んでいた。
「珍しいこともあったもんだなあ。まるで昔のお前達を見ているようだ」
「うるさいだけっすよ、近藤さん。おい、暇なら二人で見廻りでも行ってこい」
土方の言葉に、二人の攻防戦が止む。
二人という単語に、総悟の眉間に皺が寄った。
「こいつと二人でなんて、お断りでさァ」
「え、いいじゃない、別に。よし!早速行こうじゃないか沖田君!」
「一人で行ってくだせェ」
床に胡座をかいて動こうとしない総悟を見かねて、名前が総悟の腕を掴んだ。いきなり重力に逆らう力に引かれて、総悟が目を見開く。女とは思えない力で体重を持ち上げられ、無理矢理に立たされる。
唖然としている総悟の横で、名前は近藤と土方に敬礼した。
「それでは行って参ります!」
「おお、行け行け」
「気をつけてな」
「はい!では、行こうか沖田君!」
「ちょッ!」
未だに突っ立っていた総悟の腕が、またもや凄い力で引っ張られる。慌てて足を前に出し、こけることだけは免れた。
――なんなんだよ、こいつ……。
機嫌良く鼻歌混じりに前を歩く名前に、総悟は溜息をついた。
「総悟の奴、嬉しそうだな」
二人の背中を見送り、近藤がぽつりと呟いた。
それに即座に土方が反論する。
「どこがっすか?嫌がってるだけでしょう」
「いや、嫌がってなんかいないさ」
「ただの照れ隠しだよ」
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