夜に綴る物語

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「名字名前です!真撰組に入隊させてください!」

「入隊……」

いきなり登場した女に、局長の近藤の頭が混乱する。

「しかしだな、君は女性であって……」

「剣の腕になら自信はあります。それに、男所帯には慣れているので大丈夫です」

「あ、いや、それは……」

「近藤さん」

あたふたとしている近藤を見かねて、後ろでやりとりを見ていた土方が凭れていた壁から離れた。近藤の肩を押して立ち位置を変わり、正面から名前を見下ろす。
新しい煙草を取り出した土方は、マヨネーズ形のライターで火をつけた。

「お前の腕前は見た。だがな、お前の力が単にすげェってだけじゃないことも分かんだよ」

「……」

「お前、どこの流派だ?」

「……さあ?」

「はあ!?ッゲホ!ゴホ!」

真面目な問い掛けに首をかしげる名前に、土方が噎せる。

「ちょ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ……」

息を整えながら名前の背後で笑っている総悟を睨み付け、土方は心配そうに眉を下げる名前に視線を戻した。

「さあってなんだよ、さあって」

「本当に流派とか気にしてないんですよ。言うなれば、自己流です」

「……そうか」

自己流の域を明らかに越えていた名前の技を思い出して、土方は腕を組んだ。
目の前にいるのはまだ少女の類に入るか弱そうな女であって、短時間で何十人もの男の急所を狙って動けるとは到底思えない。一寸の迷いもなかったあのやり方は、かなりの経験を積んでいるものしか無理だ。

「お前、以前は何をやっていた?」

「……兄の仕事の手伝いです」

「兄の仕事?」

「はい。万事屋銀ちゃんっていう、謂わば何でも屋の――」


「「「万事屋!?」」」


名前の口から出てきた名前に、三人が過剰に反応する。
驚いて目を見開いている名前の肩を土方が掴み、前後に揺さぶった。

「お前、あの天パ野郎の妹なのかッ!?」

「まあ、義理の、ですけど……」

「成程、それなら納得できやすねィ」

土方と銀時の因縁を知らない名前の頭の上にハテナマークが浮かぶ。
平静を取り戻した土方は眉間に皺を寄せて考え込み、暫くしてから総悟を呼んだ。

「総悟、木刀持って来い」

「はい?どういうことですかィ?」

「こいつと一戦交えろってことだ」

土方の言葉に、名前と総悟が無言で見つめあう。

「名字だっけか?総悟に勝ったら、入隊を考えてやる」

「……分かりました」



「絶対に勝ちますよ」



ニヤリと笑った名前から感じた気迫に、総悟は口を堅く結んだ。


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