夜に綴る物語
□地球は勿論青かった!
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「ただいまーッ!」
勢いよく万事屋に入ると、お茶を飲んでいた新八がゴファッと噎せた。
酢昆布を食べながらテレビを見ていた神楽はパッと笑顔になり、入口付近に座っていた定春が尻尾を振り始める。
「名前さん!」
「名前ー!やっと帰ってきたアルか!」
酢昆布を放り出して抱き付いてきた神楽を受け止め、土産を持っていない方の手で背中をポンポンと撫でる。
「お帰りなさい、名前さん」
「ただいま。ごめんね、何も言わずに出ちゃって」
「いえいえ。無事で何よりですよ」
「なんだよ新八!いい子ぶって名前の好感度上げようったってそうはいかないネ!」
「そんなこと思ってねえよッ!」
私の腕の中から新八に威嚇する神楽を、まあまあとなだめる。
「いきなり五月蝿くなったなァ。神楽、名前に一息つかせてやれよ」
そう言って私の手から銀さんが土産を取り、先に長椅子に座った。
「って、食べるんかい!」
すかさず新八がツッコんだが、銀さんは無視して包装を破っていく。
「土産なんだから別にいいじゃねえか。名前も話があるんだろ?まあ座れや」
「なんで上から目線なんだよ」
これも銀さんは無視。
仕方なく、私は神楽を引き連れて銀さんの向かい側に腰を下ろした。新八も全員分の湯呑みを持って、銀さんの隣に座る。
「で、宇宙はどうだったんだ?」
早速饅頭を頬張りながら銀さんが尋ねる。
新八から受け取ったお茶を一口飲み、少し考えてから椅子の上で正座する。
「おいおい、なんだよいきなり」
驚いている銀さんに、一度深呼吸してからしっかりと目を合わせた。
神楽と新八が不思議そうに見つめるなか、深々と頭を下げる。
「銀さん……いえ、兄上……私は近い将来嫁ぐことになりました!」
「「嫁ぐ!?」」
「…………ゲブホッ!」
二人分の驚嘆の声の後、今度は銀さんが饅頭で噎せた。
「ちょ、汚いんですけど」
「いやいや!ちょっと待て名前!話が跳びすぎだ!え、なんの冗談?俺にはなんの相談も無しに?そんな風に育てた覚えはありません!」
「銀さんは育ててないでしょう!」
「待てヨ新八!ツッコんでるどころじゃないアル!どういうことネ名前!詳しく説明するアル!相手は!?相手の年収はいくらアルか!?」
「なにいきなり年収訊いてんの神楽ちゃん!おかしいでしょ!」
「お前こそ何言ってるアルか新八!結婚に年収は大切アルよ?それこそ、今後の生活が変わってくるネ」
「確かにそうですけど……。でも他にもあるでしょ?人柄とか家柄とか」
「ハッ!甘いアルよ新八。これだからお前は新八なんだヨ」
「いや、今それ関係ないでしょう!」
結婚談義を続ける神楽と新八に、頭を抱えている銀さん。
なんだろう、これは。リアクションに困るのだが。
「あ、あのぅ……銀さん?」
「……いては?」
「え?何って?」
ぼそりと呟いた銀さんの声が聞き取れず、また尋ね直す。
銀さんはバッと顔を上げ、前のめりになって叫んだ。
「相手は誰だッ!?」
「そんな大声で言わなくても聞こえるから……」
溜息をつき、そろそろいいかと思い足を崩す。
興味津々といった様子で新八まで前傾姿勢になった。
「あのさー、この展開でいくと相手って一人しかないでしょ」
「まさか、名前……」
隣に座る神楽が眉間に皺を寄せる。やはりこういった事は女の子の方が鋭いらしい。
ただ単に妹だからかもしれないが。
「うん、神威だよ」
「「「……えェェェエッ!?」」」
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