夜に綴る物語
□地球は勿論青かった!
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約2ヶ月ぶりに降り立った地球は初夏を迎えていて、生憎の雨模様だった。
ターミナルで万斉とまた子に別れを告げ、懐かしの歌舞伎町に足を踏み出し番傘を広げた。便利だなあと傘を見上げ、夜兎の仲間入りを果たしたようで自然と頬が緩む。
途中で買った土産を片手に、早速万事屋に向かう。
今日は万事屋に寄って、明日屯所に行く予定だ。
だんだんとビルから木造建築が目立つようになってきた頃、ふと前方に見慣れた後ろ姿が見えた。
いつにも増してダルそうなその姿から、パチンコで負けたことがうかがえる。
人通りの少ない通りを走り、いっきに距離を縮めた。
「銀さーん!」
「あァ?」
死んだ魚の目状態で振り返った銀さんの顔が、ピシリと凍りつく。
「えッ!?おまッ!名前ッ!?」
「イエッサー!名字名前只今無事帰還しました!」
「お、おお……なんか雰囲気変わったな……」
それは髪を下ろしているせいではないか?
そう言うと、銀さんは首を横に振った。
「いや、見た目じゃなくってだな。お前、行く前より大人びてんぞ」
「あ、マジですか。まあ、いろいろありましたから、宇宙で。歩きながら話すよ」
「そうだな」
銀さんの横に並んで万事屋に向かって歩き出す。
正直、銀さんと二人で話したいことがあったから丁度良かった。
「で、何があったんだ?」
「えっとねー、まあ神威とのことは後で話すとして……」
チラリと銀さんの横顔を盗み見て、言葉を選びながら説明した。
「言い方がいまいち分からないんだけど……晋助と、仲直り?したよ」
「え……」
すぐに足を止めた銀さんを、数歩進んでから振り返る。
心底驚いたようで、珍しく完全に目が開いていた。
「それはつまり……」
「あ、いや、よりを戻したとかじゃないの。そうだなあ……銀さんとか小太郎と同じように、昔みたいに兄妹に戻ったっていう感じかな」
「なんだ、吃驚させんなよ……」
髪を掻き乱しながら再び歩き始めた銀さんは、鉛色の空を見上げながら小さく笑った。
「なんつーか、最初っからこうなることが分かってた気ィするわ」
「え、そう?」
「お前とアイツは、やっぱり絆が強かったからな」
ポンポンと頭を撫でられ、良かったじゃねえかと背中を叩かれる。
しかし、思い出したように銀さんがこっちを向いた。
「真撰組の方はどうすんだ?」
「勿論続けるよ」
徐々に勢いが弱まってきた雨が傘を軽快に叩く音を聞きながら、刀の柄に触れる。
「今まで通り任務を果たす。公私混同はしない主義なので」
銀さんはそうかと呟いただけで、それ以上は追求してこなかった。
ようやく万事屋の看板が目に入り、やっと帰ってきたのだと実感する。
「じゃあ、続きはみんなの前でね」
「ああ」
銀さんにそう告げて、みんなに早く会いたくなって走り出した。
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