夜に綴る物語
□浮気じゃないです、忙しいんです
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久々に作る味噌汁をかき混ぜながら、私は一人悩んでいた。
そろそろ、というより流石に一度地球に帰るべきではないだろうか。仕事のこともあるし、いつまでもここでダラダラしているのは良くないだろう。
状況も一段落したところだし、この先どうするかも一度話し合った方がいい。
しかし、本当にこの先どうすればいいのだろう。
真撰組の一員として、やはり鬼兵隊と関係を持ってしまったことは後ろめたい気もする。
でもまだ辞めたくないし、攘夷浪士を捕まえたいという想いもある。
「はぁ……」
「どうしたの?」
「……ッ!?」
突如背後から声がして、驚きのあまり玉じゃくしが手から離れて鍋に当たった。
「なんだ、神威か」
ニコニコしながら料理を眺める神威。
「仕事は?」
「終わったヨ。こんなに頑張ったの初めて」
「やればできるんじゃない」
嬉しそうにアンテナを揺らす神威を撫でる。しかし、その目は私の後ろに釘付けだ。
物欲しそうな瞳をしている神威は、本当に兎のようでかわいい。
「ご飯も炊けたし、持って行くから座って待ってて」
「了解!」
神威を見送ってから、火を消して棚から大皿を数枚と飯櫃を取り出し、大鍋の蓋を開けた。
☆
「神威」
「んー?」
すさまじいスピードでご飯を書き込む神威の向かい側に座り、飯櫃で隠れている神威の顔を体を傾けて覗きこむ。
「おいしいよ?」
「あ、どうも。……じゃなくて」
一瞬迷ったが、膝の上で手を握り締め、はっきりと自分の気持ちを伝えることにした。
「私……そろそろ地球に帰ろうと思うの」
「へー……。……えッ!?」
ぴたりと箸が止まり、神威が飯櫃を置いた。
ごくりと口に残っていた物を呑み込み、頬にご飯粒をつけたまま神威が停止した。
「付いてるよ、ご飯粒」
腰を浮かしてご飯粒を取ると、引っ込めかけていた手を掴まれた。
「帰るの……?」
「取り敢えず、ね」
力が緩むのを見計らって、椅子に座り直す。
「暫くは神威も忙しいと思うし、いい機会だから一度帰ろうかと」
「……」
「別に、もう一生会えないとかじゃないから。それに……」
いつまでもこのままじゃ居られないしと付け足すと、神威は何か言いたげに口を開いたが、少し躊躇ってから閉じた。
そして、いきなり立ち上がった。
「来て」
「え……」
腕を引かれて、半ば引かれるように私も立ち上がった。
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