夜に綴る物語

□浮気じゃないです、忙しいんです
1ページ/6ページ



やったー!昇進だぜー!と騒いでいたのも束の間で、大量に回ってくる書類に神威は既にやる気を無くしていた。

「おい提督さん、元老が報告書提出しろだとよ」

「阿伏兎書いといて……」

「提督、この書類に判子お願いします」

「阿伏兎お願い……」

「提督!第2師団に取引先とのトラブルが!」

「自分達で解決しろ……」

事務机に顔を伏せた状態で、神威は次々と来る仕事を適当にあしらっている。その八割は阿伏兎に回されていて、正直どちらが提督か分からない。

「神威、私が言うのもアレだけど……仕事しろよ」

「やだ」

おいおいと声には出さずにツッコむ。
仕事熱心な土方さんとは大違いだ。

「やれやれ、この先が思いやられるぜ」

髪をわしゃわしゃと掻きながら、阿伏兎が溜息をついた。

「まあ、こいつには事務仕事は向いてないんだけどな。早いとこ代理でもたてねぇと」

「だねー」

第7師団の団長も続けることになっているし、もっと事務職にぴったりの人を代理にした方がいいだろう。
していたゲームを一旦中断し、革張りのソファから立ち上がる。

「神威」

声をかけて頭を撫でると、首を回して神威が見上げてきた。

「面倒なのは分かるけどさ、武力だけじゃ上には立てないよ?今は引き継ぎ中だから大変だけど、暫くすれば楽になるって」

「……」

「とりあえず今日の分の仕事終わったら、今日は私がご飯作ってあげるから」

「ほんと!?」

ピョコンとアンテナが揺れて、神威が体を起こした。
先程までの死んだ魚のような目とは打って変わって、蒼い瞳が輝いている。

「ほんとほんと。だから頑張れ」

「阿伏兎、その書類貸して」

どうやら効果は絶大のようだ。

「じゃあ、厨房借りてくるから」

「いってらっしゃい」

ブンブンと手を振る神威に手を振り返し、提督室を出た。


,
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ