夜に綴る物語
□共通の敵を持つと何故か絆が深まる
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一斉に、沢山の視線が私達に集まる。
視界の隅に、別の入口から入ってくる鬼兵隊が見えた。
「第7師団だ!お前達!何をしている!早くそやつらを片付けんか!」
スピーカーから聞こえるアホ提督の耳障りな声に苛立ちを覚え、つい今しがた殺した天人の持っていたナイフを、思いっきりスピーカーに向けて投げた。
そして、言われた通りに処刑台を目指す。
中央のステージの上で舞うように戦う、黒と紫が見えた。血で滑る刀を横凪ぎにして血を振り落とし、地面を蹴りあげた。
降り立つ瞬間に、一匹の天人の肩から胸にかけてを一突きする。
「神威ッ!」
白い頬を血で汚した神威が、私に気づいて振り返る。
一瞬碧眼が揺れたが、すぐに鋭い目付きになった。
そのまま巨体の天人の首を捻りあげ、前転しながら跳躍した。
え、あれ?
こっちに来……る……
「名前っ!」
次の瞬間には、私は神威の腕の中に居た。求めていた温もりに、思わず涙腺が弛みそうになる。
「神威……ッ」
左手を神威の背中に回し、チャイナ服を握り締めた。
「なんでもかんでも勝手に一人で決めないでよ、バカ」
「ごめん。でも……来てくれたんだネ」
「当たり前でしょ」
「おいそこの二人!イチャつくのは後にしろ!」
阿伏兎の怒号が聞こえてきて、ピンク色だった脳内が赤錆色に染まった。
どうやら、背後から来ていた天人に、神威が手刀を叩き込んだようだ。
現実に引き戻され、すぐさま神威から離れる。
「名前の本気が初めて見れるね」
「まあね」
周りを見渡して状況を確認し、高杉を見つけ出す。
「神威、私あっちに行ってくる!」
一言告げ、私は血が舞う戦場の中へと足を思い出した。
思い出すのは、あの日のこと――。
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