夜に綴る物語

□切っても切れないのが腐れ縁
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「また見てんのか」

高杉の声がいきなり鼓膜に届いて、春雨の母船を眺めていた目を和室の入口に向けた。

「おかえり」

「ああ」

体が勝手に反応して、昔していたように高杉から紫の羽織を受け取った。
羽織を衣紋掛けに掛けて吊るし、部屋の中央に座った高杉の前に腰をおろした。

「神威は?」

「元気にしてたぜ、今のところはな」

「……そう」

早く助けに行きたいとは思うが、下手に動けば状況は悪化する。

「明日……か」

あと1日。
普段ならあっという間に過ぎていくのに、やけに長く感じてしまう。

「シケた面すんじゃねェよ。春雨を相手にするくらい、お前にとって容易いことだろ?」

「でも……」

「俺達は宇宙を相手にしたことがあるじゃねぇか」

高杉の言葉にはっとする。下げていた顔を上げると、高杉は昔のように悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

そうだ。
あの時は、敵も多くて状況も圧倒的に不利で、それでも生き延びることができた。
思い返せば、いろいろなことが次々と起こって、頭の中が整理できていなかったから弱気になっていたのかもしれない。
春雨と言えど、母船にいる天人は第7師団よりも弱いのだ。それに、鬼兵隊も一緒にいる。
そう考えると、気が楽になった。

「そうだよね。なんとかなるよね」

「言っただろ。お前は肩に力が入りすぎてんだ。もっと気楽にやれ」

それは、昔からよく高杉に言われていた言葉だった。
こうしていざ対峙してみると、あんなに拒絶していたのに普通に話せているのだから不思議だ。

「高杉、ありがとう」

礼を言うと、高杉は珍しく驚いた表情をした。

「なんだ、いきなり」

「いや、助けてもらったお礼を言ってなかったから。それに、神威を助けるのを手伝ってくれることも」

高杉にはメリットなんてない。寧ろデメリットだらけなのに、私に手を貸してくれた。

「だから、ありがとう」

高杉は溜息をつき、窓の方に目を向けた。

「俺は、お前を守ると先生と約束したからな……」


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