夜に綴る物語
□好きは現在進行形です
2ページ/6ページ
今日は着物でいいと言われて、久しぶりに着慣れた着物に腕を通した。チャイナ服ばかり着ていたせいか、少し重く感じる。
「準備できた?」
「うん」
最後に刀の提がったベルトを腰に巻き、ブーツに足を入れた。
それと同時に、部屋の扉が開いた。阿伏兎がだるそうに入ってくる。
「客の御到着だ」
「分かった。名前、行くヨ」
「はーい」
返事をして、神威に続いて部屋を出る。
誰が来るのだろうと考えながらついていくと、いきなり神威が立ち止まった。急に止まることはできず、神威の背中に額が当たった。
「ここだよ」
着いたのは、いつも使っている会議室だった。
開閉ボタンを押し、神威が私の後ろに下がった。
「え、なに?」
前に出された理由が分からずにいると、トンッと背中を押された。
足を踏み入れた先から香った紫煙の匂いに体が固まる。
「よお名前」
「……高杉……」
並んだ椅子の一つに座っている高杉を睨み、理由を聞こうと振り返ろうとした。
が――
「んっ!?」
背後から布で口を塞がれ、甘ったるい匂いが鼻を突いた。
以前にも嗅いだことのあるそれに、頭の中で警報が鳴り響く。しかし、気づくには一歩遅かった。
体から力が抜け、意識がだんだんと遠退いていく。
――なん……で……
「ごめんネ……」
視界が黒く染まる直前に、神威の声が聞こえた。
,