夜に綴る物語

□急にシリアスになるのが醍醐味ってもんだよ
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プシューと空気が抜けるような音がして、白い扉が開いた。

「おお神威、来たか」

「何か御用ですか?アホ……阿呆提督」

優雅にワインを飲んでいた提督が、自分の反対側の席を指し示した。

「まあ座るがよい」

俺が席につくと、提督はグラスを置いて短い手を組んだ。

「さて、第7師団にある任務を頼みたくてな。……鬼兵隊のことだ」

「鬼兵隊がどうかしましたか?」

「うむ……」

うすうす勘づいてはいたが、わざと尋ねた。
どうせ鬼兵隊は用済みなんだろう。

「第7師団の仕事は分かっておるな?」

「勿論です」

「ならば……鬼兵隊を潰せ」

――やっぱり……。

「高杉という男、何を考えとるのか分からん故、このままにしておくのは危険だからな」

これが春雨のやり方だ。
使うだけ使って、後は捨てる。

「……分かりました。失礼します」

早々に話を切り上げて、さっさと船に戻りたい。
侍と一戦交えるのは楽しそうだし、戦わせてくれるのならそれでいい。要点だけ聞いて帰るつもりだった。
が……。

「それと神威、あの女のことだが」

名前の名前が出て、外に向けられていた足を再び提督の方に向けた。

「名前が何か?」

提督の口がニヤリと弧を描いた。





「あの女を始末しろ」





「…………え?」

「知らぬとでも思っておったのか」

足下にブラックホールができたような感覚が襲った。

「あの女、もともと鬼兵隊のトップで、親はかつて春雨と敵対していた宇宙海賊の重役だったそうだな。そんな奴が信じられると思うか?悪いことは言わん。さっさと始末してしまえ。お前がしないのなら別の者を送り込む」

「……」

「女ごときに陶酔するな。いずれ身を滅ぼすぞ」

「……失礼します」

拳を握り締め、提督に背を向けた。

背後で扉が閉まった瞬間、止めていた息を吐き出した。

「アホ提督のくせに……」

名前を始末する?
馬鹿馬鹿しい。

「ハハ……ハハハハ……」

長い廊下に、俺の笑い声が反響した。


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