夜に綴る物語
□子供ってのはみんなかわいいものなんだよ
2ページ/6ページ
外から蛙の鳴き声が聞こえてくる。
部屋で今日覚えた文字の練習をしていると、庭から誰かの足音がした。がさごそと草を掻き分ける音も混じる。
『ん?』
窓に近寄りそうっと外を覗いてみると、バッと頭が三つ上がってきた。
『うわっ!?』
『『『しーッ!』』』
一斉に人指し指をたてて、静かにしろと合図された。
銀兄とこた兄と晋助だった。
『何やってるの?』
『今から星を見に行くんだ』
こた兄が小声で言った。
『星?』
『ほら、今日は七夕だから』
『七夕……』
そう言えば、松陽先生がそんなことを言っていたような気がする。
『名前も一緒に行かねえか?』
晋助に尋ねられ、即座に頷いた。
『行く!』
『だから静かにしろって……』
銀兄が面倒くさそうに言って、私に下駄を差し出した。
晋助に支えられながら、窓から地面に降り立つ。
音を立てないように窓を閉めた。
『それじゃ、行くか』
『うん!』
差し出された晋助の手を握って、私は銀兄とこた兄を追いかけた。
***
目的地の原っぱに到着し、私達は円になって寝転んだ。
『うわぁ……』
空を見上げ、その光景に思わず声が出た。
『凄い……』
『すっげーなあ』
濃紺の空に、砂糖をまぶしたように白く流れている天の川。その周りにも、たくさんの星が散らばっていた。
晋助とつないでいた手に力が籠る。
『なあヅラ、あれいくつあるんだ?』
『ヅラじゃない、桂だ。……さあ?数えきれないくらいある』
銀兄とこた兄のやり取りに笑う。
ふと視線を感じて横を見ると、晋助と目が合った。
『綺麗だな』
『うん』
強く握られたその手を、私は最後まで離さなかった。
ずっとこんな時間が続けばいいと思っていた。
だけど、この時既に私達の未来は狂い始めていた。
,