夜に綴る物語

□子供ってのはみんなかわいいものなんだよ
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外から蛙の鳴き声が聞こえてくる。
部屋で今日覚えた文字の練習をしていると、庭から誰かの足音がした。がさごそと草を掻き分ける音も混じる。

『ん?』

窓に近寄りそうっと外を覗いてみると、バッと頭が三つ上がってきた。

『うわっ!?』

『『『しーッ!』』』

一斉に人指し指をたてて、静かにしろと合図された。
銀兄とこた兄と晋助だった。

『何やってるの?』

『今から星を見に行くんだ』

こた兄が小声で言った。

『星?』

『ほら、今日は七夕だから』

『七夕……』

そう言えば、松陽先生がそんなことを言っていたような気がする。

『名前も一緒に行かねえか?』

晋助に尋ねられ、即座に頷いた。

『行く!』

『だから静かにしろって……』

銀兄が面倒くさそうに言って、私に下駄を差し出した。
晋助に支えられながら、窓から地面に降り立つ。
音を立てないように窓を閉めた。

『それじゃ、行くか』

『うん!』

差し出された晋助の手を握って、私は銀兄とこた兄を追いかけた。



***



目的地の原っぱに到着し、私達は円になって寝転んだ。

『うわぁ……』

空を見上げ、その光景に思わず声が出た。

『凄い……』

『すっげーなあ』

濃紺の空に、砂糖をまぶしたように白く流れている天の川。その周りにも、たくさんの星が散らばっていた。
晋助とつないでいた手に力が籠る。

『なあヅラ、あれいくつあるんだ?』

『ヅラじゃない、桂だ。……さあ?数えきれないくらいある』

銀兄とこた兄のやり取りに笑う。
ふと視線を感じて横を見ると、晋助と目が合った。

『綺麗だな』

『うん』

強く握られたその手を、私は最後まで離さなかった。



ずっとこんな時間が続けばいいと思っていた。

だけど、この時既に私達の未来は狂い始めていた。



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