夜に綴る物語
□子供ってのはみんなかわいいものなんだよ
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『初めまして、名前ちゃん』
里親を亡くした私の前に現れたのは、里親の友人だったという男の人だった。
『大丈夫。みんな名前ちゃんよりも歳上だけど、きっとすぐに仲良くなれますよ』
部屋の中にはたくさんの子供がいた。
一斉に視線が集まり、慌てて松陽先生の後ろに隠れた。
『ほら、怖がらないで』
そっと背中を押されて前に出る。
『名字……名前……です』
小さく呟き、着物を握り締めて下を向いた。頭の上に松陽先生の手が乗せられる。
『名前ちゃんは今日から皆さんの仲間になります。仲良くしてあげてください』
あちこちから返事が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げると、夏の山を思わせる深緑の瞳の男の子と目が合った。
それが、高杉晋助だった。
***
『あっ……!』
みんなと鬼ごっこをしていると、つまずいてこけてしまった。
怪我はしなかったが、こけたときに手と足を強く打ってしまい、痛みで涙が溢れてきた。
『うぅっ……』
いくらぬぐっても、次々と涙が頬を伝って地面に染みを作っていく。
『何やってんだ?』
突然、背後から声がした。
『しっ……すけぇっ……』
『なんだ、転んだのか』
晋助は腕を引っ張って立たせてくれた。
パンパンと、着物についた砂を落としてくれる。
『ほら、泣くな』
ごしごしと目を擦られた。
『泣いたら負けだぞ』
『負、け……?』
『そうだ。だから泣くな』
『……うん』
こくりと頷くと、晋助は頭を撫でてくれた。
『中に入って本でも読むか?』
『うん!』
『はっ、単純だなあ、お前は』
私の手をとった晋助の手は、温かくて優しかった。
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