夜に綴る物語

□女はミステリアスなもの
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「本艦へ行く?」

「ああ。上から呼び出しだ」

阿伏兎が面倒臭そうに溜息を吐いた。

「何の用なのかねぇ」

「さあ。でも、行かないと厄介なことになるよ」

“運動”をしているであろう名前を見に行こうと、回転椅子から立ち上がった。

「早速本艦に向かって」

「へいへい」

後の事は阿伏兎に任せて、事務室を出た。





大広間に近付くにつれ、だんだんと金属音が聞こえてきた。
やってるやってる。
そう思った直後、団員の一人が腰を低く落としたままの体勢で、こっちに滑ってきた。

「団長!」

「やあ。名前の調子はどうだい?」

その男は立ち上がって番傘を持ち直した。

「良すぎですよ。もうすっかり傘にも慣れてます」

「そりゃあ良かった」

大広間の中央では、赤いチャイナ服を纏った名前が、団員二人を相手に“運動”をしていた。

「本当に凄いですね、あの人。新人とはいえ、夜兎の男相手にしながら、まだ余裕みたいなんですよ。あいつらにはいい訓練になる」

「ははは、流石だね。最早化け物だ」

すると、俺めがけて銃弾が飛んできた。
さっと避けて犯人を見る。

「もう、危ないだろ」

「誰が化け物だ!丸聞こえなんですけど!」

「ごめんごめん」

スッキリしたー!と言って、名前は背伸びをした。

「「ありがとうございました!」」

新人二人が名前に頭を下げる。

「お礼なんてしないでよ。私の運動に付き合ってもらってるだけなんだから」

名前の言う運動は、一般人にとっては殺し合いだと俺は思う。

名前はニコニコとしながら歩いてきた。

「部屋戻る?私シャワー浴びたいんだけど」

「うん、いいよ」

団員にじゃあ、と言い大広間を後にした。





名前の髪を拭いてやりながら、本艦から呼び出しがきたことを伝えた。

「春雨の本艦?」

「そ」

「うわ、すっごいおもしろそう」

「別におもしろいことなんてないよ」

「だって悪のアジトだよ!?おもしろくないわけがない!」

「名前の本職って警察だよね?そんなこと言っていいの?」

「いいのいいの」

嬉しそうに体を前後に揺らす名前。
時折見せるこういう子供っぽいとこに、俺は弱い。濡れた髪と、前がはだけているチャイナ服という色気ムンムンの格好のときは尚更。

悪戯したくなって、スリットの間から覗く白い足をつつーっと撫でてみる。

「おい変態、やめたまえ」

何故か上から目線で止められた。

「もうちょっと恥ずかしがったりできないの?」

「できない」

こうまではっきり断定するとは。

「ちぇ」

仕返しついでにうなじにキスマークを付けると、すさまじい威力の裏拳をかまされた。



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