夜に綴る物語

□宇宙って実はゴミだらけ
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目を開けると、視界にオレンジ色が映った。
静かに寝息をたてている目の前の人物を見て、心の中で首をかしげる。

――なんで神楽が入ってきてるの?

――寝ぼけてて、間違えたのかな?

そう解釈して起きようとしたところで、腰に腕が巻き付いていることに気付いた。

――もう、しょうがないなあ。

私は、顔に落ちてきた長いオレンジ色の髪を払って―――――――――長いオレンジ色の髪……?

え?神楽ってこんなに髪の毛長かったっけ?
伸びたの?
一日でこんなに伸びるもんなの?
酢昆布の食べ過ぎですか?
それとも、また変な病原菌に感染したのか?
ハゲの次はこれですか?
混乱していた脳が、一つの結論に辿り着いた。

「……神威……?」

小さい声で呟いたつもりだったのだが、突然パチリと目の前の人物の目が開いて、蒼い瞳が私をとらえた。

「……」

「……」

「……」

「……」

「おはよ、名前」

「……おはようございます?」

取り敢えず返事はしたものの、状況が理解しきれていない私。

こいつは神威だ。
これは間違いない。

さっき起きたばっかだから、これは夢じゃない。
うん、これも間違いない。

じゃあなんで……。

「もう体は大丈夫?」

尋ねられて初めて、力が戻っていることに気付いた。

「うん、大丈夫」

「よかった」

「……ねえ神威」

「ん?」

「今、私はどういう状況に立たされてるの?」

「んー……宇宙旅行中」

「……宇宙旅行?」

「うん」

「……宇宙?」

「うん。ここは春雨の船の俺の部屋」

「……へえ」

なんかよく分からないが、どうやら私は宇宙にいるらしい。

って、

「宇宙!?」

寝てる間に何があったんだ!?

「そんなに驚かないでヨ。名前が寝てる間にちょっと船まで運んだだけなのに」

「それはちょっとじゃないよ!」

「でも、名前が吸った薬の解毒剤はここにしかなかったからさ」

「それには感謝してるけれども!」

「お侍さんには許可貰ったヨ?」

「え、そうなの?」

銀さんが?

「休暇だと思って楽しんでこいだってさ」

休暇ですか。

「分かった。そういうことなら、お言葉に甘えさせていただきます」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「で、一緒に寝てるのは何故?」

自分で言ったくせに、一度意識したら急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

しかし、神威は離れるどころかより一層近付いてきた。
下がろうとしても、ガッチリと抱かれていて身動きがとれない。

「俺のことを呼び続けてたのは誰だろうネ?」

「は!?知らないよそんなの!」

「……ふーん。まあいいや」

突如、リップ音が聞こえた。

「ごちそうさまでした」

悪戯が成功した子供のような笑顔の神威が、ドアップで視界を占領する。
唇に残った柔らかい感触。
脳がやっと起こった事を理解した。

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