夜に綴る物語
□居候って楽だよね
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『神威……』
突然名前の声が聞こえて、慌てて上体を起こした。
しかし、こんなところに名前がいるはずがないと考えなおし、小さく笑いを溢す。
「夢か」
そうは思ったものの、何故か不安が胸をよぎった。
嫌な予感がする。
ベッドから降り、いつもの服に着替えて部屋を出た。
「おお団長、もう起きたのか?」
「まあね」
既に仕事を始めていた阿伏兎が俺を見て目を丸くした。しかしすぐに真面目な表情になる。
「ちょうどいいところに来た。仕事だ仕事」
「えー」
「そう言うなって。行き先は地球だぞ」
「地球?」
ピョコンと頭のアンテナが揺れる。
「ああ、地球だ。最近うちの商品を売りさばいてる野郎がいるらしくてな。皆殺しにしろ、だとよ」
「バカな奴等だネ。まあ、そっちの方は阿伏兎に任せるヨ。俺は名前のとこに行くからさ」
「言うと思ったぜ……」
項垂れる阿伏兎の肩を叩く。
「それじゃ、行こうか」
「へいへい」
足取り軽く、小型船に乗り込んだ。
☆
「銀ちゃん、名前は?」
「んあ?よく寝てるよ」
すやすやと寝ている名前の頭を銀時が撫でた。
隣にぽすんと神楽が座る。
「守ってやれなかったなぁ……」
銀時は自分の無力さを呪いながら呟いた。
「きっと大丈夫アル。名前は強いから、これくらいでへこたれたりしないネ」
「そうだな……。なあ神楽、名前の家に行って着替えとか持ってきてくれねぇか?暫くうちに住ませる」
「分かったアル」
神楽は立ち上がって、部屋から出ていった。
静かになった室内に、名前の寝息だけが響く。
こうしていると、名前が鬼兵隊を出てうちに来たときのことを思い出す。
−−あの時は一晩中泣いて、そのまま寝ちまったんだけっけな……。
銀時が頭を撫で続けていると、名前の瞼が震えた。
「かむい……」
助けを求めているかのように、布団の上に投げ出されていた手がシーツを掴んだ。
ぽとりと右目から涙がこぼれ、枕に落ちる。
「……か……むい……」
再び呟かれた名前に、銀時が溜息をこぼす。
「また厄介な奴に惚れちまったなぁ」
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