青春ドロップ
□何事も微妙なぐらいがちょうどいい
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「・・・・・・マジで?」
下駄箱前に張り出されたクラス表を見て、唖然とする。
私の名前は、Z組の表にあった。
Z組と言えば、問題児達が詰め込まれているクラスである。2年に上がる時も、Z組だけクラス替えがなかった。
1年の時も2年の時も、私は普通のクラスで普通の生活をおくっていたのに、それが今になって覆されようとしている。
「嘘だろー」
「嘘じゃありませんぜ」
背後から、聞き覚えのある声が投げかけられた。かと思えば、隣にぬっと人が現れる。
「ゲッ、総悟……」
同じ風紀委員に所属している、Z組の生徒、沖田総悟だった。
「俺もZ組でさァ。一年間よろしくお願いしやす」
皮肉としか聞こえない挨拶をされた。
「今日は体調がすぐれませんので、早退します・・・」
現実逃避がしたくて、くるりと右回りをする。
「待ちなせェ」
背を向けた途端に、肩を掴まれた。
「新学期早々それはないんじゃないですかィ?しんどいんなら、俺が教室までお姫様抱っこしてやりまさァ」
「あれ、元気がわいてきたなぁ」
焦って笑顔を張り付ける。
只でさえZ組に入れられたことを知られるのが嫌なのに、その上、これ以上目立つようなことはしたくない。
恐る恐る振り返ると、総悟の勝ち誇ったような、見下したような心底ムカつく笑顔があった。
「そりゃ良かった。じゃあ、行きましょうや」
ぐいぐいと腕を引かれ、半ば強引に教室に向かった。
これでも総悟は見た目がいいから、通るだけで女子生徒が視線を向ける。中には嘗て同じクラスだった子もいて、再び逃げ出したい念に駆られた。
“3年Z組”というプレートが見えてきて、いよいよ悪夢が現実となり始める。
「ほーら、名前の新しい城ですぜ」
「そんな城いらんわッ!」
総悟が入口の前で止まり、まるで執事のように仰々しくドアを引いた。
「ようこそZ組へ、お姫様」
こうして、私の戦いの日々が始まったのである。
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