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□永遠を
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「ねえ臨也、欲しい物ある?」

休憩と言って私の大腿部を枕にして寝ていた臨也が、ゆっくりと目を開けた。
眠たそうな目が、私をとらえてからまたゆっくりと閉じる。

「なに、急に……」

発せられた声も、疲れにより少し掠れていていつもより低い。
私はこの声が意外と好きだ。

「なにって、今日臨也の誕生日」

「ああ、そっか……そうだったな……」

「いろいろ考えたんだけど、しっくりくる物がなくてね。もう本人に聞いた方がいいかと思って」

自然のままの柔らかい黒髪に指を通した。
すぐにすり抜けていく髪を弄んでいると、その手を掴まれて臨也の胸の上で固定されてしまった。

「べつに何もいらないよ。この年齢になると、誕生日を祝われてもあまり嬉しくない」

「もう四捨五入したら30だしね」

「うるさい」

睨まれた。
どうやら本人も多少は気にしているらしい。
ごめんごめんと言いながら、まだ自由な左手で頭を撫でた。

「でも、臨也はよくても私の気がすまないんだけどな」

「そう言われても、特に今は欲しい物はないしな……」

臨也は溜息まじりにそう言うと、ふと口元に笑みを浮かべた。
握られていた手に、更に力が籠められる。

「この先も、俺が何をしたとしても必ずそばにいてくれるっていうなら、それ以外は何もいらないよ」

予想もしていなかった言葉に、臨也の頭を撫で続けていた手が止まった。
そんなこと、答えは分かりきっているだろうに。

「当たり前でしょ。臨也が何をしようと、私はついていくよ」

弱く脆いこの人に、私は私のすべてを捧げる。
すぐに壊れてしまいそうなこの人を、私だけは愛してあげたい。

「臨也」

「ん?」

「誕生日、おめでとう」

貴方がこの世に生を受けたことを、貴方と巡りあえたことを、私は誰よりも感謝している。

「ああ、ありがとう」

目を閉じたまま、臨也は微笑んだ。
神ではなく彼に、私は永遠の愛を誓おう。








Happy Birthday IZAYA!!

2014.05.04

 

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